米、輸入制限で日欧と溝 貿易相会合 揺れる中国対応

日米欧貿易担当相会合のため、ブリュッセルのEU欧州委員会ビルに入る世耕経産相(右)=10日(共同)
日米欧貿易担当相会合のため、ブリュッセルのEU欧州委員会ビルに入る世耕経産相(右)=10日(共同)【拡大】

 日米欧貿易担当相会合が10日、ベルギー・ブリュッセルで開かれた。共通テーマである中国への対抗で結束を固めるはずが、トランプ米大統領による輸入制限の発動決定で状況は揺らぎ、雰囲気は一変。日欧対米国の構図に塗り変わった。

 世耕弘成経済産業相は同日、日米欧での会合に先立ち、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と個別に会談した。笑顔のライトハイザー氏に対し世耕氏は表情を崩さず無言で握手。これより前に欧州連合(EU)のマルムストローム欧州委員(通商担当)との会談で見せた笑顔とは対照的だった。

 日米欧会合後、世耕氏は記者団に「(米国の輸入制限について)ライトハイザー氏に遺憾の意をしっかり伝えた」と硬い表情で語った。

 日米欧貿易相会合は、昨年12月の世界貿易機関(WTO)閣僚会議に合わせ日本主導で初めて開かれた。対中国で連携強化を確認。米欧から継続開催の要望があったといい、今回も友好ムードが想定されていた。政府関係者はトランプショック直後の開催に「むしろタイミングが良かった」と強がったが、緊張が高まったのは間違いない。

 自国優先を掲げるトランプ氏が就任以降、米欧の関係は良好とは言い難い。その中で共通のテーマとして日本が着目したのが、中国の過剰な鉄鋼生産だった。貿易赤字に苦しむ米国だけでなくEU筋も「問題意識を共有する国々の協力で対処する」と前のめりだった。

 トランプ氏が輸入制限を決めた8日は、くしくもチリ・サンティアゴで環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の署名式が行われた。昨年1月、米国が離脱し漂流が懸念されたが、日本が残る11カ国のつなぎ留めに奔走、複雑な利害調整を重ねて妥結にこぎ着けた。各国は今後、年内発効を目指し国内で手続きを進める。

 日本とEUは、経済連携協定(EPA)交渉が昨年12月に妥結。今夏にも署名し、2019年の早い時期に主要部分の発効を目指している。TPPへは英国や韓国、タイ、インドネシアなども関心を示しており、協定は今後、拡大する可能性がある。米国もTPP復帰への検討を表明し、いずれは交渉へ動きだすだろうというのが一致した見方だ。

 ただ「現状では米国から具体的な接触はなく、むしろ後退した印象だ」(交渉筋)という。言動や政策方針が移ろい、捉えどころのないトランプ氏に、日本やEUなどは粘り強く交渉していく状況が続きそうだ。