東日本大震災7年、進む取り組み 大学の研究・技術で復興を

開発中の缶詰用ロボットと岩手大理工学部の三好扶准教授=1月、盛岡市
開発中の缶詰用ロボットと岩手大理工学部の三好扶准教授=1月、盛岡市【拡大】

  • 缶詰などの非常食を使ったレシピ作りの活動に集まった東北福祉大の学生ら=1月、仙台市

 東日本大震災の被災地では、地元大学を中心に、研究者の知識や技術を農林水産業の再生や東京電力福島第1原発事故の影響解明など、復興支援に役立てようと組織を挙げた取り組みが進んでいる。防災教育の充実など人材育成にも積極的。人口流出による地方衰退への危機感と「地域を支える」という使命感が活動の原動力だ。

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 被災地の多様な課題に合わせ、東日本大震災で被害が出た岩手、宮城、福島の3県の国立大は、新たな拠点や研究所を開設して長期的な調査や支援に取り組む環境を整備、成果を地元へ還元しようと力を入れる。

 岩手大は、沿岸地域の主力産業である水産業の支援に注力する。2013年、同県釜石市に沿岸地域の活動拠点を新設。三陸地域の主力魚種であるサケの遺伝特性の研究や、陸上養殖の実用化に向けた調査などを行っている。16年度には農学部に水産システム学コースも開設し、研究者や水産加工業の担い手育成にも取り組む。

 総合大学の強みを生かし、12年に文系と理系の垣根を越えた「災害科学国際研究所」を立ち上げたのは東北大だ。約80人の研究者が、津波の起こるメカニズム解明などに取り組むほか、古文書から過去の津波による被害規模も調査する。原信義理事は「震災前、大きな津波がかなり高い確度で起こることが研究者の間で指摘されながら、社会に還元できていなかった反省がある。世界に貢献する研究にしたい」と意気込む。

 福島大は、東京電力福島第1原発事故の発生直後の11年4月、「うつくしまふくしま未来支援センター」を設置。地元農家とともに農作物の放射性物質の測定などを行い、正確なデータの収集と分析で農業を支援。被災した子供や保護者のための相談窓口のほか、中学生や高校生を対象にした防災リーダー育成講座などを開設し、地域住民に寄り添った実践的な活動を続けている。

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 ■AI缶詰ロボ開発 人手不足解消

 岩手大理工学部の三好扶准教授(ロボット工学)の研究室では、東日本大震災で大きな被害が出た沿岸部の水産業で深刻な人手不足を解消しようと、人工知能(AI)を使ったロボットの開発に挑戦している。

 研究室に設置されたパソコンを学生が操作すると、幅約45センチのベルトコンベヤー上に置かれた冷凍サンマを、樹脂製の平たいプレートをつけたアームが、次々にすくい上げる。

 三好准教授が缶詰工場で数年以内に実用化を目指しているロボットだ。

 開発を依頼したのは釜石市の水産加工会社「津田商店」。津波で工場が流され2012年に再建したが、震災前に約240人だった従業員は約190人に減少。人手不足に悩んで三好准教授に相談、開発が始まった。

 工場では12人の従業員が手作業でベルトコンベヤー上に流れるサンマの切り身を、75~90グラムになるよう2切れずつ選び缶へ入れる。手に載せた感覚で重さを量る熟練の技が必要だ。

 三好准教授は、3次元形状測定器で切り身の高さや面積などを計測。AIが最適な2組の切り身を見つけ、アームで缶へ入れる技術を開発した。「これまでAIを利用したロボットで缶詰の魚を扱うなんて考えたこともなかった。なんとか今後の成功モデルにしたい」と意気込む。

 津田保之社長(63)も「この技術が実用化すれば、どんな魚種や加工法にも応用できる」と期待する。

 切り身が速く動いても、正確に形状を測定し、確実にすくい上げるようにすることが今後の課題。

 「できなかったことを試行錯誤して可能にするのが大学の使命。被災地の大学として、復興のため力を尽くしたい」と三好准教授は力を込めた。

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 ■学生を防災リーダーに 教育充実

 「今日はサバ缶を使ったライスバーガーを作りまーす」。1月10日、仙台市の市民センターの調理室に、東北福祉大(仙台市)2年の佐藤貴亮さん(20)の声が響いた。学生がサバ缶を開け、缶の汁とご飯と交ぜ合わせる。フライパンで焼き始めると、部屋中に食欲をそそる香ばしい香りが広がった。

 缶詰などの非常食を使ったレシピ作りの活動に集まったのは、東北福祉大の防災士協議会「Team Bousaisi」の学生メンバー約30人。

 東北福祉大は、災害時に救助活動や避難所の運営に携わるなど、地域の防災活動を担う防災士の養成・研修を行っており、これまでに4000人以上の防災士を誕生させた。

 実践的な活動を行うため、2013年に設立されたのが「Team Bousaisi」で、約60人の学生の活動を数人の教員がサポート。地域の防災訓練に参加したり、ラジオ番組で啓発活動を行ったりしている。

 この日のレシピでは「コメやサバ缶、しょうゆなど家にあるものを使い、極力材料を少なくした。大人から子供まで楽しめるものを考えた」と佐藤さん。2年の岡田麻祐さん(20)も「協議会の活動では防災を楽しく考えられる」と笑顔だ。

 東日本大震災の経験を生かすため、学生への防災教育を充実させる大学が全国でも増えている。

 学生を見守っていた斎藤昌宏准教授は「大学で防災リーダーを育てれば、将来、地域や企業で災害に強い社会をつくってくれる。震災を知らない世代が入学してきても、教訓を伝え続ける強固な組織にしていきたい」と期待を込めた。