【中国を読む】安定取り戻した金融市場の行方

 □第一生命経済研究所・西●徹

 このところの世界経済の自律回復の動きは、世界最大の輸出国となっている中国経済にとって輸出を通じた景気回復を促す一助となっている。さらに、国際金融市場は先進国による量的金融緩和政策などに伴う「カネ余り」となるなか、世界経済の回復も追い風に「適温相場」状態が続いてきた。こうした世界経済および国際金融市場をめぐる環境の好転を受けて、昨年以降の人民元相場は底入れが進んでいるほか、株式相場も上昇基調を強めるなど、中国金融市場は安定を取り戻している。中国経済も持ち直しの動きを強めるなかで、ここでは先行きの中国金融市場の行方について展望することにしたい。

 ◆無理やり沈静化

 2015年に中国株式市場で発生したバブル的な価格高騰は、前年末に行われた金融緩和の動きに加え、香港市場を通じた外国人投資家による中国A株の売買解禁の動きが大きく影響したとみられる。

 ただし、その後の株価暴落を受けて、企業は自発的に売買停止措置に動いたほか、当局は大株主を対象に株の売却を実質禁止するなどの対応をみせた。

 こうした異例のPKO(価格維持策)の効果もあり、株価は翌16年初めには底を打つ動きがみられた。

 一方、株価の暴落と時を同じくする形で下落トレンドに突入した人民元相場は、16年以降も下落が続いた。特に、当局による規制の手が届かないオフショア市場が主導する形で人民元安圧力が高まり、外国人投資家による人民元売りに加え、中国国内からの資金逃避の動きもその流れを加速させたとみられる。この結果、当局は人民元相場の安定に向けた為替介入によって外貨準備を大きく減らした。最終的には、当局による資本規制強化策の導入で人民元相場の下落を無理やり落ち着かせる事態に追い込まれた。

 その後の中国金融市場をめぐっては、中国経済の持ち直しの動きに加え、国際金融市場が「適温相場」の様相をみせてきたことも重なり、安定を取り戻している。

 なお、年明け以降は、上昇ペースを加速させていた株式相場は、当局による金融引き締め観測の高まりや、先月の国際金融市場の動揺に伴い調整圧力が掛かったものの、足元では年初の水準を取り戻しつつある。

 他方、人民元相場については先に書いた当局による資本規制の効果に加え、世界的な「カネ余り」に伴う資金流入の活発化もあり、持ち直しの動きを強めてきた。さらに、このところの世界経済の自律回復の動きは、中国にとって輸出の底入れを促しており、14年半ばをピークに、その後は2年半ほどの間に1兆ドル(約106兆円)ほど減少した外貨準備高も昨年以降増加に転じている。

 こうしたことも中国経済および金融市場が落ち着きを取り戻している証左と捉えることができる。結果、当局が資本規制の緩和に動くとの見方も出ている。

 ◆市場環境厳しく

 ただし、中国をはじめとする新興国を取り巻く環境は厳しさを増しつつある。米連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策の正常化に取り組むなか、米トランプ政権による減税策などにより米国経済が上振れする可能性が高まっている。

 そうなれば、米FRBによる利上げペースの加速が予想される。また、欧州でも欧州中央銀行(ECB)による金融政策の正常化が見込まれている。こうした動きを反映して、足元では米ドルやユーロなど主要通貨が上昇基調を強めており、新興国通貨には下落圧力が掛かりやすくなっている。

 国際通貨基金(IMF)は世界金融危機後に外貨準備の「適正水準」の基準を発表した。当該基準で測ると、中国は外貨準備の規模こそ大きいものの、適正水準に満たないと判断できる。この背景には、人民元相場が管理変動相場制を採用していることが影響している。

 足元の国際金融市場は世界経済の自律回復を背景に早期に落ち着きを取り戻しつつあるが、先行きへの体制強化は避けられそうにない。

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 【プロフィル】西●徹

 にしはま・とおる 一橋大経卒。2001年国際協力銀行入行。08年第一生命経済研究所入社、15年から経済調査部主席エコノミスト。新興国や資源国のマクロ経済・政治情勢分析を担当。40歳。福岡県出身。

●=さんずいにウかんむりに眉の目が貝