米金利上昇でマネー流出加速 新興国株・債券、売り越しに転じる

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 米国の金融引き締めを背景にした米金利上昇により新興国からの資金流出が強まっている。高い利回りを求めて米債に投資マネーが向かうことで、新興国債券の売り越しが加速。国際金融協会(IIF)は9日、今年の新興国への資本流入額が当初予想より430億ドル(約4兆7000億円)減少するとの予測を公表した。

 IIFは世界の金融大手が参加する国際機関。IIFによると、4月単月の新興国市場の株式と債券が売り越しに転じた。米大統領選を受けて市場の不透明感が強まった2016年11月以降、初めてという。

 米長期金利が4年3カ月ぶりに3%台に乗せた4月下旬以降は特に債券の売り越しが加速。4月16日~5月4日の直近のデータで、新興国債券市場で61億ドルの流出超過となった。

 IIFは「13年5月の『テーパー・タントラム(市場のかんしゃく)』を超える流出ペース」と分析している。同月には米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が資産買い入れの縮小を示唆し、新興国からの資本逃避により市場が動揺した。

 高成長率の新興国への直接投資は堅調だ。一方、IIFは株式と債券を合わせた資本流入額の見通しを下方修正し、18年に1兆2120億ドルと前年並みに据え置いた。「米高金利とドル高が投資の潮目を転換させた」という。アルゼンチンやトルコが通貨急落に見舞われるなど、お金の流れの変調が新興国経済に悪影響を及ぼす懸念もある。(ワシントン 塩原永久)