米中通商協議、停戦に中国ひとまず安堵 “北カード”が効果?

 【上海=河崎真澄】中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は20日、「貿易戦の停戦は米中両国に共通する勝利だ」とする論評を掲げ、ワシントンでの米中貿易協議をめぐる共同声明を評価した。また、20日の国営新華社通信によると、中国側代表の劉鶴副首相は、「双方が関税の上乗せ措置中止で共通認識に達した」と述べた。

 米国との間で報復関税の応酬が始まれば、昨年で3752億ドル(約41兆5千億円)もの貿易黒字を抱える中国が圧倒的に不利。“共通の勝利”を演出しながらも、トランプ政権による対中攻勢にひとまず歯止めをかけたことに、中国側は胸をなで下ろしたようだ。

 今月3、4日に北京で行われた米中貿易協議が物別れに終わったのに対し、今回の協議で中国がやや押し戻した形になった。その背景として外交筋は、「貿易問題にからめ、来月の米朝首脳会談をめぐってトランプ政権に北朝鮮の核問題で取引材料を提示した可能性が高い」と話した。「習近平国家主席が腹心中の腹心である劉鶴副首相に“北カード”を切らせ、米側に貿易黒字削減の数値目標を引っ込めさせた」とみる。

 一方、追加関税の撤回は共同声明では触れられていない。水面下でどのような取引が行われたのか、明らかになっていないが、防戦一色の中国にとり、北朝鮮が“援軍”になったとの受け止めが広がっている。

 ただ、この“援軍”の効果もそう長続きしない。

 中国ですらコントロールの難しい北朝鮮。その出方は読み切れず、米朝首脳会談の成否は不透明だ。会談で目立った成果が上がらなければ、北カードも効力を失う。中国側はトランプ政権が対中貿易戦争を再開させるまで、米金融機関を念頭に置いた金融分野の市場開放など“からめ手”で時間をかせぐとみられる。