Jトラスト、カンボジアの商業銀買収 成長する銀行セクターに期待感

カンボジアの街角には24時間利用可能なATMが増えた=プノンペン市内
カンボジアの街角には24時間利用可能なATMが増えた=プノンペン市内【拡大】

  • Jトラストが55%の株を取得するANZロイヤル銀行=プノンペン市内

 Jトラストは、カンボジア国内第5位の商業銀行、ANZロイヤル銀行を買収すると17日に発表した。同行を保有するANZファンズから、発行済みの株式の55%を約90億円で取得し、連結子会社とする。同行は、カンボジアの企業グループ、ロイヤルグループの子会社と、オーストラリア・ニュージーランド銀行の子会社ANZファンズとの合弁で2005年に創設された。

 ◆メコン地域を視野

 Jトラストは、成長戦略の一環として東南アジアを中心に事業拡大を目指している。14年にはインドネシアの銀行を買収しており、今回が東南アジアで2行目の買収となる。カンボジアについては、今回の買収発表で、「銀行貸出残高成長率が26%であることなど、経済が急成長をしている国の一つ」と評価している。

 JトラストはANZロイヤル銀行について、「カンボジア国内の上位1%の企業と人口5%の富裕層を顧客対象とする低リスク市場にフォーカスした事業戦略」をとってきたと指摘したうえで、「株式取得後は、これまでの事業の一層の成長を図りつつ、リテール戦略を確信し、市場規模が大きく、潜在成長力の大きいセグメントまで拡大することを目指している」としている。さらに、同行をメコン地域での事業拡大拠点として、ミャンマーやラオスへの展開も視野に入れているという。

 Jトラストが指摘したように、カンボジアは毎年7%前後の高い経済成長率を維持しており、なかでも銀行セクターは順調な成長を続けている。9日にカンボジア国立銀行(中央銀行)が発表した「銀行監督報告書2017」に同国の銀行業界の実態がさまざまな数字で示されている。

 カンボジアには現在、商業銀行39行、特殊銀行15行があり、商業銀行のうち12行が外国銀行だ。報告書によると、これら銀行の17年末の総資産は前年に比べて約19.3%増の114兆8000億リエル(約3兆1225億円)に拡大した。17年末の貸付残高は前年比16.8%増の65兆リエルで、貸付先は小売業が17.6%、卸売業が12.4%、農林水産業が10.3%、製造業が6.3%、建設業が9.5%などとなっている。

 平均不良債権比率は、16年と17年がともに2.4%と変わらず、低水準で安定している。

 17年末の預金残高は同23.3%増の68兆7000億リエル。預金者数は10年の121万人の3.7倍の約453万人に増えた。同期間に預金額は約4.4倍に増加している。国内の銀行の支店は887カ所、現金自動預払機(ATM)は1460カ所に増えており、全国各地で銀行の利用者が増えていることがうかがえる。

 ◆預金金利は下落

 一方、預入金利は一時期よりも抑制されている。報告書によると、17年の平均金利はリエル建て預金で6.23%と、前年の6.73%からやや下がった。07年には7%を超えていたことから、近年はなだらかな下落傾向にある。米ドル建て預金金利は4.4%で前年と変わらないが、6%だった07年からは下落している。

 カンボジアでは、商業銀行や特殊銀行のほかに、低所得層向けに小口金融業を営むマイクロファイナンス機関も経済活動に浸透している。報告書によると、国内には76のマイクロファイナンス機関がある。17年の時点で、約170万人が8兆リエルを預金しており、前年比で35.6%増加している。また、貸付額は同じく25.5%増の15兆9000億リエルに達した。セクター別の貸付先は、農業が約27%、家計部門が約30%となっている。

 こうした状況から、報告書は「カンボジア国民の金融機関の取り込みは55%に達した」と指摘する。さらに、インターネットや携帯電話、スマートフォンで金融サービスにアクセスする仕組みが相次いで導入されており、利便性を高めているという。一方で、適正なサービスが行われるよう、効果的で国際水準の銀行監督能力の向上、金融知識の啓発などにも取り組む必要があるとしている。(カンボジア月刊邦字誌「プノン」編集長 木村文)