【高論卓説】中国 改革開放40年目に注目 「普恵金融」実現へ広がる民営銀行 (1/2ページ)

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 中国人にとって1978年は忘れられない年といえる。現代中国の経済・社会に大きな変貌をもたらした重要政策「改革開放」が始まった年だからだ。

 改革開放40周年の今年、習近平国家主席は「改革を最後までやり遂げなければならない」と新年のメッセージで強調した。4月に海南省博鰲(ボアオ)で開かれた「博鰲アジアフォーラム」年次総会の開幕式における習氏のスピーチでも、改革開放を加速する方針を表明した。とりわけ対外開放に関して、金融や自動車市場などにおける参入規制の緩和に言及した。折しも米中貿易摩擦の深刻化が指摘された時期だったため、中国の動きについて「米国への秋波」との解説があったが、実際には中国の基本方針である改革開放政策を徹底的に貫くという姿勢を示したものだと思われる。

 金融分野に焦点を当ててみると、習政権の「経済ブレーン」で現在は副首相を務める劉鶴氏が、今年1月にスイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で行った講演で金融分野のさらなる開放方針を強調した。その背景には近年中国が進める「普恵金融」と、その実現のための規制緩和があると考えられる。

 普恵金融は、国連が2005年に提起したコンセプトで、日本では「金融包摂」や「ファイナンシャル・インクルージョン」などと呼ばれている。「普恵」は「普遍的な恩恵」の意味を持ち、中国では金融機関が経済発展を全面的に支えるため、金融インフラの整備を通じて中小企業や低所得層、三農(農業、農村、農民)など、これまで十分な金融サービスを受けられなかった人々に金融サービスを提供することを示している。中国の現状に目を向けると、10万人当たりの銀行インフラ(商業銀行の支店数やATMの数など)で先進国の水準よりも大幅に後れを取っているという世界銀行の14年のデータがある。

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