【マネー講座】《「もらう」相続》(3)〈相続の受け方〉手続のあらましと注意点 (2/4ページ)

 遺産の分割方法を指定した遺言がある場合、指定された分割方法が確定します。配分に不満でも異議を唱えることはできません。しかし、遺言者の判断能力が不十分であったため遺言が無効の可能性がある、あるいは遺留分(兄弟姉妹以外の相続人が最低限相続を受けることができる財産の割合)を侵害される等の事情がある場合は、訴訟など法的手段に訴えることが可能です(ただ、残念ですがトラブルにはなります)。

相続人をきちんと調査する

 相続人は、被相続人の戸籍を調査して確認します。

 戸籍の調査は、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に依頼することができます。戸籍謄本等に基づき法定相続一覧図を作成して法務局に申し出れば記載内容を証明する文書を発行してくれます。この制度を利用すれば相続手続のつど戸籍謄本の束を持ち回る必要が無くなり、事務負担が軽減されます。

 被相続人に隠し子がいた、というドラマのような話ばかりでなく、実は養子縁組をしていたなど、知られていない相続人が明らかになる事例は少なくありません。新たな相続人が見つかると、相続手続はやり直しになってしまいます。煩雑かもしれませんが、手順を踏んで進めてゆきましょう。

遺産に関する情報を共有し譲り合いの精神で早期に分割協議を調える

 遺言の有無や遺産の内容など、相続に関する情報は相続人全員で共有しましょう。きちんと情報共有しないと遺産を隠しているなどと疑われ、トラブルにつながりかねません。円滑な相続には風通しの良い人間関係が不可欠です。

 遺産の分割方法を指定する遺言がない場合は、相続人と遺産を確認したのちに、誰がどの財産を取得するのかを具体的に定める「遺産分割協議」を行います。法令によれば、借入金などの債務は法定相続割合で当然に分割されて各相続人に承継されますが、実務上は金融機関など債権者との交渉により承継方法を定めるのが一般的です。

 私は、遺産分割協議に臨むときの心得は以下の3点だと思います。

 ・確たる理由なく、法定相続分を大きく上回る財産を得ようとは思わないこと。どんなに争っても、最後は法定相続分にしかなりません。

 ・どうしても欲しい財産、その財産を得られれば諦めてもよい財産など、財産に順位付けをして臨むこと。

 ・譲歩できることは譲歩し、早期の合意を目指すこと。

遺産分割協議は全員参加が不可欠