タンカー所有企業に追い風 米の対イラン制裁、代替供給拡大

ペルシャ湾を航海する大型タンカー(ブルームバーグ)
ペルシャ湾を航海する大型タンカー(ブルームバーグ)【拡大】

 米国によるイラン制裁は、欧州とアジアの石油タンカー所有企業に追い風になっている。輸送量減少による短期的な混乱は次第に落ち着き、今後は米国や西アフリカなどからの代替供給による輸送でトンマイル(1トンの貨物を1マイル運ぶ輸送量)が増加、需要が拡大すると考えられる。超大型タンカーの世界シェア5%のイラン国営タンカー会社(NITC)への制裁も、輸送能力の過剰感抑制の一因となるだろう。

 ◆運賃は再上昇見通し

 米国の対イラン制裁を受けて利益の押し上げが見込めるタンカー所有の世界海運大手として、欧州ではユーロナブ、フロントライン、DHT。アジアでは中遠海運能源運輸(コスコ・シッピング・エナジー・トランスポーテーション)と日本郵船が挙げられる。

 イランの石油タンカーによる世界的な取引は制限される公算が大きい上、NITCが所有するタンカーは世界的に保険保証が受けられなくなる可能性がある。そうなれば、これらのタンカーはイラン産原油の浮体式貯蔵庫と化すだろう。石油取引会社は、180日間の猶予期間が終了するかなり前からイランのタンカーを使用した原油調達を抑制し、代替調達先を探すと予想される。

 NITCはイラン国営石油会社(NIOC)の子会社で原油タンカー60隻余りを有し、そのほとんどが大型原油タンカー(VLCC)だ。同社のVLCCの世界シェアは約5.3%。

 米国の対イラン制裁で、これまで大きく下落していたタンカー運賃が再び上向く見通しだ。今後数カ月の間に供給過剰が解消され、世界的に旺盛な需要を背景に石油輸出量が再び増加して運賃が上向くだろう。2016年1月の制裁解除から今年5月8日までの間にイランの原油輸出量は日量250万バレルに増加し、インド、中国、韓国などの石油取引会社は調達先を近場に求め、タンカー需要は低下していた。イランのタンカーが世界市場に戻ったことで、運賃に下押し圧力がかかった。

 ◆米の輸出増が原動力

 アラビア湾沿岸と東南アジアを結ぶ航路のVLCC運賃は、過剰積載容量から今年5月4日時点で前年同期比75%低下した。西アフリカ-米東海岸航路では63%の低下。18年のタンカー用船料は、過剰積載容量と石油在庫取り崩しの影響で、過去4年で最低の水準となっている。

 イランの原油輸出量の減少はタンカー所有者にプラスに働く。中国、インド、および韓国がイラン産原油の主な買い手だが、これらの国が米国ならびに西アフリカからの調達量を増やすことで、輸送需要が押し上げられる公算が大きい。中国やインドの石油取引会社がイラン産原油の減少分を米国産で補い、米国の原油輸出がタンカー需要拡大の原動力となるだろう。  米国では石油輸出が増加し、3年という比較的短い期間で市場シェアは6%に達した。中国が米国からの原油輸入量を増やすというのが最も可能性の高いシナリオだが、そうなれば最大の恩恵を受けるのはタンカー輸送市場だろう。

 米国の石油ターミナル、ルイジアナ・オフショア・オイル・ポート(LOOP)では原油積載量が拡大している。同ターミナルでは4月、深海港におけるVLCCへの2度目の積載作業が完了した。(ブルームバーグ Rahul Kapoor)