鉄鋼輸入制限 米産業界から不満噴出 コスト上昇や報復憂慮


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 トランプ米政権は鉄鋼・アルミニウムの輸入制限の品目別の適用除外製品を発表したが、度重なる強硬な貿易措置には米産業界から不満が噴出している。企業は輸入品の調達価格の上昇を懸念するほか、貿易相手国からの報復を憂慮。地元企業から突き上げを受ける議員たちも政権の政策運営に危機感を募らせている。

 「多大な雇用につながる開発計画が遅れている」「政権が生み出したのはカオス(混沌(こんとん))だ」。上院財政委員会が20日開いた米輸入制限に関する公聴会では、議員が鉄鋼関税を所管するロス商務長官に集中砲火を浴びせた。

 輸入制限による関税で調達価格が値上がりする不利益は産業界にとって深刻だ。全米商工会議所によると、国内の鉄鋼価格は1月以降に約40%上昇。ドナヒュー会頭は「米企業が先行きが見通せなくなった」と事業環境の悪化を訴える。

 米商務省はこの日、米企業に配慮して一部製品の適用除外を決めたが、煩雑で時間を要する手続きへの不満は強い。特に中小企業には申請手続きに対応する余力が乏しく、公聴会では「小規模事業者に影響がしわ寄せされている」(ハッチ委員長)との批判も出た。

 輸入制限に対しては中国が既に対抗措置を発動するなど、米国の輸出産業にも余波が及びつつある。またトランプ政権は中国の知的財産侵害に対抗する対中制裁を7月6日に発動するが、中国も同規模の報復を同日に実施する方針だ。

 各国は報復に際して米製オートバイや大豆など有力議員らの地元産品を標的にしており、11月に中間選挙を控える議員は危機感を募らせる。議会内では多方面で対立を激化させる政権の通商政策運営をめぐる権限を弱めるべきだとの議論も出ている。(ワシントン 塩原永久)