「一帯一路」に組む込む
伝統的にインドとの関係が強かったモルディブだが、ヤミーン氏が13年に大統領に就任してから中国との関係が急速に深まった。中国は現代版シルクロード構想「一帯一路」で海のシルクロードにモルディブを組み込み、空港拡張などさまざまなインフラ整備を支援。中国人観光客が押し寄せている。
ナシード氏は今年1月の記者会見で、少なくとも16の島を中国の関係者が賃借して港湾開発やインフラ整備が行われていると指摘。「中国が土地を収奪し、主権を傷つけている」と批判していた。
ヤミーン氏は中国傾斜を強めると同時に、反体制派を弾圧した。内政に関知しない中国は都合がよく、昨年12月には北京を訪問して自由貿易協定(FTA)に署名した。中国から資金を得て大規模開発を進めてきたモルディブだが、たとえ政権が変わっても大きな禍根を残す危険がある。
スリランカでは2015年までの10年間にわたったラジャパクサ政権で、過度に中国に傾斜した弊害が顕著になってきた。中国の資金でインフラ整備を進めたが、多額の借金と金利がのしかかってきたからだ。
シンガポールのニュース専門テレビ、チャンネル・ニュース・アジアによるとサマラウィーラ財務相は5月、今年の元利の支払いは28億4000万ドルにのぼると述べた。来年はさらに悪化し、42億8000万ドルにふくれあがるという。
15年に大統領に就任したシリセナ氏は、インドや日本なども含めたバランス外交を掲げるが、前政権の負債による中国の呪縛から逃れられない状況だ。