「自由貿易に挑戦」、米を批判 中国半導体に過剰生産の恐れ 通商白書

東京港に停泊するコンテナ船(AP)
東京港に停泊するコンテナ船(AP)【拡大】

 世耕弘成経済産業相は10日、2018年版の通商白書を閣議に報告した。米国の保護主義的な通商政策は「世界貿易機関(WTO)に基づく自由貿易体制への挑戦だ」と批判して、世界経済へのマイナスの影響を危惧した。中国政府による補助金制度のゆがみが鉄鋼の過剰生産につながったほか、半導体も同じ理由によって過剰生産が危ぶまれるとも指摘した。

 米中貿易摩擦の要因の一つである、中国の鉄鋼過剰生産問題の背景を分析した。中国の鉄鋼会社の利益率が生産拡大に伴って低下したのに、政府は補助金を増やして経営を支えた。非効率な生産設備が削減されず、世界市場に大量の鉄鋼製品が供給される結果を招いたと指摘。中国は現在、半導体産業を国策として育成しており、半導体も中国の過剰生産で市場が混乱する恐れがあると警告した。

 米国がメキシコ、カナダと結ぶ北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を始めたことに触れ、自動車メーカーの影響は日系よりも米国の方が大きいと分析した。NAFTAが破棄されると、米自動車部品産業で5万人の雇用が失われるとし、自由貿易の重要性を強調した。

 米国の17年のモノの貿易赤字(通関ベース)は7962億ドル。中国が3752億ドルと半分近くを占め、メキシコが711億ドル、日本が688億ドルと続いている。

 インターネットを通じた国際的な電子商取引(EC)が急増している現状も紹介した。中国の消費者による日本でのネット取引額は16年に1兆円を超える規模に成長した。17年も拡大しており、日本企業にとって業績を伸ばすチャンスだと説いた。

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【用語解説】通商白書

 日本の通商政策や貿易をめぐる課題と成果をまとめた経済産業省の報告書。世界経済や貿易、対外投資の動きをデータとともに分かりやすく解説している。1949年から毎年発行しており、2018年版は70冊目。東日本大震災後の11年版では経済再生のため、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など経済連携の必要性を指摘。17年版はトランプ米政権の発足を受け、自由貿易の重要性を強調した。