【専欄】トルファンは雨だった 元滋賀県立大学教授・荒井利明 (1/2ページ)

 中国・西域の旅を終えて、6月下旬に北京に戻り、「トルファンで雨に降られた」と中国の知人に話したところ、「トルファンでも雨が降るのか」と驚いていた。

 トルファン(新疆ウイグル自治区)はウルムチ(同)の南東約180キロにあり、車で約3時間。高速道路の両側には風力発電の風車が並んでいた。

 トルファンに着いた日、雨がパラパラと落ちてきた。翌朝はもっとしっかりと雨が降った。旅のガイドブックには、トルファンの年間降水量は16ミリとある。トルファンの雨はとても珍しいのだ。

 観光に出かけるころには雨もあがり、青空が広がった。西遊記にも登場する火焔(かえん)山の山中にある仏教石窟「ベゼクリク千仏洞」を参観した。むろん、ここでも人と物のチェック。参観料は40元(約660円)。子供や高齢者への優遇はあるが、対象は中国人だけで、外国人に優遇はない。

 実はちょうど35年前、改革開放が始まって間もない1983年に、この千仏洞を訪れたことがある。何のチェックもない。鍵のかかった石窟を勝手に隙間からのぞき込んでいると、鍵束を持ったウイグル族の少年が現れた。参観料の0.15元を支払うと、石窟の一部を見せてくれた。参観料は35年間で267倍に値上がりした計算になる。今年は改革開放40年という節目の年だが、遺跡にとっての改革開放とは、保護と管理の強化、参観客の増加、参観料の大幅アップといえよう。

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