【データで読む】貿易戦争下の中国 景気減速にてこ入れ

中国上海の洋山深水港のコンテナヤード。米中貿易戦争が激化している(AP)
中国上海の洋山深水港のコンテナヤード。米中貿易戦争が激化している(AP)【拡大】

 中国経済は2015年頃から、ニューノーマル(新常態)と呼ぶ構造調整を進めており、投資の減速により成長ペースが鈍化してきた。固定資産投資の内訳を見ると、製造業や不動産は17年から持ち直しているが、高い伸びを維持してきたインフラ投資は、17年秋に習近平国家主席が2期目の政権を発足させた頃から伸びが大きく鈍化し、全体を押し下げている。

 一方、米国は、中国からの輸入に対する制裁関税の規模を9月24日に2500億ドル(約28兆4300億円)に拡大し、今後は対象を全輸入品目に広げる可能性にも言及している。いくつかの試算によれば、米中貿易戦争による中国経済への影響は1%に満たないといわれるが、4~6月期に6.7%だった経済成長率が、年間目標である6.5%を下回り、長期的には産業競争力の低下を招く可能性がある。

 7月末の党中央委員会政治局会議で決定した下半期の経済運営方針では、積極的な財政出動、金融緩和などで内需を下支えするほか、対外的には巨大経済圏構想「一帯一路」や自由貿易協定(FTA)の推進による米国以外の国・地域との貿易拡大を目指し、米中貿易戦争の影響を最小限に食い止めようとしている。

 ただし、中国は企業や地方政府の過剰債務との構造問題を抱えており、景気刺激はこうした問題の解決を難しくする。また、膨大な対米輸出を第三国に振り向けることも簡単ではない。11月の米中間選挙後に対立が和らぐとの期待はあるものの、日本企業は中国を組み込んだサプライチェーン(部品などの供給網)の見直しに加え、中国景気の減速が貿易や資源価格、金融市場に与える影響を視野に入れる必要が出てきている。(編集協力=日本政策投資銀行)