【専欄】日中関係は今後、どうなるのか 世論の動向で考える

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 日中関係は昨年半ば以降、改善の動きが明確になり、先月には安倍首相の中国公式訪問が実現した。中国紙「環球時報」(10月27日付)は社説で、協力拡大の流れを逆転させないよう、両国の共同の努力を呼びかけているが、両国関係は今後、どのように展開するのだろうか。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 今後の両国関係を占う上で重要な要素の一つは、両国の世論の動向である。内閣府が毎年秋などに実施している日本国民を対象にした「外交に関する世論調査」が参考になるだろう。昨秋の調査では、関係改善の流れを反映して、中国に「親しみを感じない」と答えた者が前年より2ポイントほど減少し、6年ぶりに8割を切ったが、なお78.5%と高い。2018年度分の調査では、この数字はもう少し低くなると思われる。

 日本の言論NPOと中国国際出版集団が共同で毎年実施している世論調査も、両国の世論動向を論じる際にしばしば引用される。それによると、相手国の印象に関して、日本の世論は昨年、今年と少しずつ改善されているが、中国に「良くない」印象を持っている者は今年の調査で86.3%もいる。

 一方、中国人の日本に対する印象はこの2年間に大きく改善されており、日本に「良くない」印象を持っている者は、16年には76.7%だったが、今年は56.1%にまで減少している。これは習近平政権の対日関係改善方針を反映しているだけでなく、訪日経験のある中国人が急増していることとも大きく関わっているとみられる。今年の調査によると、訪中経験のある日本人回答者は13.5%だが、訪日経験のある中国人回答者はそれより多い18.6%だった。

 日本人の中国に対する印象や親近感はやや改善されたとはいえ、依然として悪いのが現状である。だが、内閣府の昨年の調査によると、今後の日中関係の発展は両国、アジア・太平洋地域にとって「重要だと思う」と答えた者は76.9%で、前年よりも4ポイント増えている。また、言論NPOの調査でも、日中関係を「重要」と考える者は日本で71.4%、中国で74.0%となっており、ともに7割を超えている。

 これらの調査から、両国民の大半は相手国との関係を重視していることが分かる。この相手国を重視する考えが変わらず、両国の政治指導者がその考えを尊重するならば、今後の日中関係はそれほど悲観的に見なくてもよいのかもしれない。