米国産牛肉の月齢制限撤廃へ 食品安全委「健康リスクなし」

 食品安全委員会プリオン専門調査会は15日、牛海綿状脳症(BSE)対策で月齢30カ月以下が輸入条件となっている米国産牛肉の輸入規制について、月齢制限を撤廃しても人の健康へのリスクはないとする評価案をまとめた。30日間の意見公募(パブリックコメント)を経た上で、食品安全委が根本匠厚生労働相に答申する。厚労省は食肉の処理方法などの細部について米国と協議した上で月齢制限撤廃を正式に決定する。

 12月30日の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)発効を前に、牛肉の輸入規制緩和は米国が主張し続け、トランプ政権誕生以降は圧力が高まっていた。

 調査会終了後、座長を務める真鍋昇・大阪国際大教授は「安全を担保するため、きちんと米国でのリスク管理ができているか日本政府は積極的に調査してほしい」と述べた。

 規制撤廃による日本の畜産業界への影響は限定的とみられる。米国産牛は経済性から通常20カ月程度の月齢で食肉処理されることが多い。30カ月超の牛は少なく、畜産業界への影響は限定的とみられる。

 ある生産者団体の担当者は「米国が日本に輸出するのは若い牛がほとんどで、規制が撤廃されても大きな影響はないだろう」と指摘。日本への輸入が大きく増えることは想定しにくいとして、むしろ日米の新たな貿易交渉への政府の対応が気がかりだという。

 厚労省からの依頼を受け、食品安全委は今年4月から、月齢制限を撤廃した場合の健康に及ぼす影響を専門調査会で検証。危険部位である脊髄の除去など米国でのリスク管理を議論してきたが、これまで大きな問題点は指摘されていなかった。

 BSEは、異常化したタンパク質「プリオン」による、脳組織がスポンジ状となる牛の病気。2003年に米国内で感染牛が確認され、米国産牛肉の日本への輸入の禁止や規制などの措置がとられた。