【水と共生(とも)に】国民生活に直結 水道法改正案の行方 (1/3ページ)

西日本豪雨で土石流により壊滅状態となった愛媛県宇和島市の吉田浄水場=7月(南予水道企業団提供)
西日本豪雨で土石流により壊滅状態となった愛媛県宇和島市の吉田浄水場=7月(南予水道企業団提供)【拡大】

  • 下水道分野では国内初となるコンセッション方式を導入した下水処理施設「西遠浄化センター」の汚泥処理棟など=浜松市
  • パリ市水道公社のベンジャミン・ガスティン業務部長(左)と筆者=衆院議員会館

 水道事業の広域化や民間企業の参入を促す水道法改正案が7月、先の国会では与党などの賛成多数で衆院で可決したが、会期切れとなって継続審議となった。このため、今臨時国会で参院で可決・成立する見込みである。筆者は長年、世界と日本の水問題解決に取り組み、特に「世界の水道の民営化問題」に注目し続けてきた。水道民営化について、考えを述べてみたい。

 法改正の背景に4つの理由

 水道法を改正する背景には、大きく4つの要因がある。

 (1)人口減少に伴う料金収入の減少(過去10年間で2000億円の減収)

 (2)水道施設(浄水場、管渠(かんきょ))の老朽化

 (3)自然災害や地震による水道被害の頻発化(水道施設の全国耐震化率は基幹管路で38.7%)

 (4)定年退職者が増加し、水道職員数が減少。政令市や給水人口50万人以上の自治体では、職員数が確保されているが、給水人口5万人以下(約1400の水道事業体のうち8割が該当)では職員が10人以下。

 日本の水道事業を取り巻く状況を簡単に言うと「カネも、ヒトも、技術も、同時多発的に失われている状況」にある。

 国内の水道施設の総資産額は46兆円を超えており、仮にこの半分を更新するとしても最低23兆円の資金が必要である。こうした状況下で、たびたび「水道法の改正」が上程されてきた。

 改正法案の中で注目されるのは官民連携「コンセッション」の項目である。コンセッションとは、料金徴収を伴う公的施設(高速道路、空港、上下水道など)について、所有権を公的機関に残したまま、事業運営権を民間事業者に付与するスキームのことだ。民間資金を活用して水道事業を運営することになるため、水道民営化の先鋒(せんぽう)とみられている。

 海外の水道事業の動向

 水道法改正案の衆院通過を受けて、インターネット上では「日本の水道を外資に売り渡す暴挙、これで日本の水道は終わった」といった過激な表現が見られた。その根拠になっているのが、世界で1990年代に起きた水道民営化の動きだ。

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