米、協議早期合意にかじ 対中貿易摩擦 株価押し上げ優先

北京にある中国商務省。米中協議の先行きに楽観的な見方が広がっている=9日(AP)
北京にある中国商務省。米中協議の先行きに楽観的な見方が広がっている=9日(AP)【拡大】

 トランプ米大統領が米中貿易戦争への懸念で下落した株価の押し上げを狙いに早期合意を目指していることが分かった。ホワイトハウス内の議論に詳しい複数の関係者が明らかにした。

 北京で開かれた米中次官級通商協議は9日、当初予定を1日延長し3日間の日程を終えた。中国外務省の陸慷報道官は9日の記者会見で「協議の延長は両陣営が協議に真剣に取り組んでいることの表れだ」とした上で、「良い結果が得られれば、米中両国に恩恵をもたらすだけでなく、世界経済にとっても朗報となるだろう」と話した。

構造問題では不一致

 関係者によれば、エネルギーや農業分野で互いの立場に歩み寄りがあったものの、より困難な問題では溝が大きいという。協議に参加した中国の当局者は、構造的な問題で不一致が残っており、今後の上位レベルの交渉で解決の必要があると述べた。月内にはライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と中国の劉鶴副首相が会談する。

 米国は3月までに合意できなければ中国からの輸入品2000億ドル(約21兆7700億円)相当に15%の追加関税を課し25%にすると表明している。

 トランプ大統領は8日のツイートで、「中国との協議は非常に順調だ!」と楽観的なメッセージを発した。これに加え、日程が延長されたことで金融市場には楽観ムードが強まった。

 関係者によると、トランプ大統領が相場上昇を強く望んでいることが中国との合意に積極的な主な理由だという。大統領はこの1カ月間下落している米株式市場を成功したか失敗したかの物差しにしており、株価の変動に不満を表してきた。米株の指標、S&P500種株価指数は昨年12月1日の米中首脳会談から8日までに約8%下落している。

 トランプ大統領は米中双方に利益をもたらす合意を結びたいと公言する一方で、中国は経済減速と株価下落からみて、迅速な結果を米国より強く望んでいると指摘している。しかし昨年5月に始まった米中通商協議は事態打開の期待を繰り返し裏切ってきており、中国政府は米国の要求に屈しないと何度も表明している。

経済顧問が解消主張

 こうした中、ホワイトハウス内では、一部主要経済顧問が相場回復に向け貿易摩擦の早急な解消を主張している。これに対し政権内部の対中強硬派は、動揺を続ける株式相場が貿易交渉に対する大統領の気分に影響を与えかねないとの懸念を募らせている。ロス商務長官やナバロ大統領補佐官(通商製造政策担当)らはこれまで、貿易戦争が金融市場に与える影響を軽視する内容の声明を発表してきた。

 こうした中、政権当局者の数人はここ数週間、株価下落に落胆し、対中貿易戦争と自分たちの発言をめぐる金融市場の懸念に困惑していることを非公式に認めている。

 チャイナ・ベージュ・ブックのリランド・ミラー最高経営責任者(CEO)は8日、ブルームバーグ・テレビとのインタビューで、「われわれは合意に向かっている。中国が合意を望み、必要としていることは疑いない。中国経済は公式データが示しているよりはるかに大幅に減速していると私はみている」「ホワイトハウス内にはより長期の戦いを望む者も多いが、トランプ大統領が方針を打ち出し、合意を望むと述べている。従ってわれわれはそれに向かっている」などと述べた。(ブルームバーグ Jenny Leonard、Jennifer Jacobs)