論風

金融緩和による消費不況 二重産業構造の変革が急務 (1/3ページ)

 金融緩和による円安で2013年度から15年度まで円換算輸入額が増大し貿易赤字が激増した。ドル建て貿易は輸出が5割、輸入が7割ゆえ、円安の高進でこの2割の差で円ベースの貿易赤字が膨らむ。(早稲田大学名誉教授・田村正勝)

 しかし16年度は円高に転じたため黒字に転換し、17年度に再び円安となったが、輸出数量が伸びて約2.5兆円の黒字となった。中国の景気回復によるアジア景気の回復から、対アジア輸出が伸びたためだ。輸出の50%以上が対アジア輸出である。

 だが18年に入り黒字幅が減少し、7~9月期は年換算で約2.1兆円の赤字となった。

 世界的な景気上昇で、半導体製造装置や自動車の輸出は増加でも、輸出数量全体が落ちてきた。他方で粗油、液化天然ガスなどの国際価格の値上がりと円安で、「輸入の円換算額」が増大している。

 加えて米国の金利引き上げで円安傾向となり、それに伴って貿易赤字は増大する。この赤字が一層の円安をもたらす悪循環となれば、さらなる景気悪化の懸念だ。

 米中摩擦で貿易に打撃

 とりわけ“米中関税チキンレース”も憂慮される。すでに日本の対米輸出は18年6月以降、自動車や半導体などの製造装置、鉄鋼が鈍り、対中輸出は電子部品輸出が鈍化している。また半導体関連は、中国自身の自給が視野に入ってきたゆえ、この対中輸出も限界だ。またチキンレースが激化すれば、世界経済全体が悪影響を被る。

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