【主張】イプシロン 「民の発想」で市場参入を

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型ロケット「イプシロン」4号機が、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所を飛び立ち、人工的に流れ星を発生させる超小型衛星など衛星7基を予定の軌道に放出した。

 平成25年9月の初号機から4機連続の打ち上げ成功で、複数の衛星を軌道投入したのは4号機が初めてである。

 今回の成功をさらなる飛躍への礎とし、日本の宇宙産業を力強い軌道に乗せたい。

 イプシロンは、通信や地球観測などの分野での小型衛星の打ち上げ需要拡大が見込まれるとして開発された。小惑星探査機「はやぶさ」(初代)などを打ち上げたM5ロケットの固体燃料技術を継承している。

 最大の特長は、開発陣が「ロケットの世界に革命を起こす」と意気込む打ち上げシステムで、人工知能(AI)による機体点検やパソコンを使って少人数で打ち上げ作業を管理できる「モバイル管制」を実現させた。

 4号機の打ち上げ費用は約55億円で、衛星7基の軌道投入に成功したことで1基当たりの費用は10億円を切る計算になる。

 小型衛星を低コストで頻繁に打ち上げるという開発目標に、必要な技術は実証されたといえるだろう。ただし、国際市場への参入、競争力の強化を考えると、もっと頻繁に打ち上げを重ね、安さと信頼性を世界にアピールする必要がある。

 技術は高くても、1年に1機程度の打ち上げ実績では海外の利用者の食指は動かない。イプシロンを「ガラパゴス化」させてはならない。

 4号機はベンチャー企業の人工流れ星衛星のほか、大学や民間企業が開発した将来の宇宙、衛星技術につながる実証衛星を宇宙空間に運んだ。日本で学ぶベトナム人技術者が開発した衛星もある。

 衛星利用を娯楽の分野にも広げ、産学を問わず多くの人の参入を促す取り組みを評価するとともに、一層の充実を求めたい。

 衛星打ち上げ市場には、欧州とロシアの厚い壁があり、中国、米民間企業の台頭も著しい。日本が食い込むのは容易ではない。

 鍵を握るのは民間のアイデアだろう。宇宙で遊ぶような斬新な発想や、企業目線のセールス戦略を持ち寄りたい。