【経済インサイド】本当に必要なのか 官民挙げた「QR狂想曲」の行方 (3/3ページ)

QRコードを使った決済の実証実験
QRコードを使った決済の実証実験【拡大】

  • QRコードによるキャッシュレス決済の実証実験
  • 観光を楽しむ外国人の姿が目立つ東京・浅草の雷門周辺(三尾郁恵撮影)
  • 多くの訪日客の姿がみられる関西国際空港の国際線到着ロビー=平成30年10月

 根強い現金信仰

 とはいえ、全国に張り巡らされたATM(現金自動預払機)網の恩恵で現金の使い勝手がいい日本では、“現金信仰”がいまだに根強い。また、高額消費に向いたクレジットカードと決済速度が速い交通系電子マネーが普及していることもあり、スマートフォンでアプリを立ち上げないと使用できないQR決済がどこまで普及するかは未知数だ。

 金融とITが融合した「フィンテック」の競争が激しくなる中、QR決済の主導権争いは銀行やクレジットカード会社といった既存大手の牙城を崩そうとIT業界などの新興勢力が揺さぶりをかける場と化した。無論、競争が激しくなることで国内でキャッシュレス決済の普及が遅れている小規模店舗や地方での導入を促す効果が期待できるが、18年末のペイペイのキャンペーンではクレジットカードが不正に利用される被害が相次ぐなど、まだまだ発展途上のサービスだ。

 銀行など既存大手からは口座振替や振り込みを算入すれば日本のキャッシュレス比率は既に5割を超えていると、急速な非現金比率の引き上げ方針に疑問を呈する声もある。国内外問わず、消費者にとって最も使い勝手がいい決済手段は何なのか、一度冷静に問い直す必要がありそうだ。(田辺裕晶)