米銀、税負担減の恩恵どこへ 融資の伸び鈍化、最大勝者は株主

米フィラデルフィア市内のウェルズ・ファーゴの店舗(AP)
米フィラデルフィア市内のウェルズ・ファーゴの店舗(AP)【拡大】

 米共和党が主導した税制改革のおかげで、米国の大手銀行が昨年に減らした税負担は約210億ドル(約2兆3000億円)に上った。2016年におよそ28%だった平均実効税率は19%を下回った。この結果、株主は利益還元という形で大いに報われた一方、銀行では数千人規模の雇用が削減され、融資の伸びは減速した。

 税制改革が景気浮揚策として効果的だったのかという議論は、今後活発になる可能性が高い。大手23行は配当と自社株買いを23%増やしながら、4300人近い人員を削減しており、さらに数千人規模の人員削減を示唆した銀行も複数ある。銀行が減らせた税負担額は、米航空宇宙局(NASA)が要求した2019年度予算を上回り、連邦捜査局(FBI)の犯罪対策費概算の2倍を超える。

 バンク・オブ・アメリカ(BOA)は昨年、約14万5000人の従業員を対象に1000ドルの特別賞与を支給すると発表。ウェルズ・ファーゴなどは最低時給を15ドルに引き上げた。しかし、BOAは同年にほぼ4900人を、ウェルズは約4000人を削減。シティグループでは5000人が職場を去り、今後も数年間にわたって数千人規模の削減が検討されている。

 減税前から、金融界ではモバイルやオートメーションへのシフトが進んでいたとはいえ、銀行の収入に比較した人員コストの比率は減税後に低下し、従業員に回る分は少なくなった。

 銀行にできる最大の経済貢献である融資は、昨年に残高が2.3%増加したが、前年の3.6%を下回った。このうち商業・鉱工業向け貸し出しは年終盤に上向いており、減税が経済成長の維持に貢献した兆候だと、ウェドブッシュ・セキュリティーズのピーター・ウィンター氏は指摘する。

 米銀行協会(ABA)は広報担当者を通じ、「大規模な税制改革が銀行セクター、まして経済全体に与えた影響を完全に評価するには、1年という時間ではまったく足りない」とのコメントを出した。

 最大の勝者は株主だ。大手6行を合わせた利益は史上初の1200億ドル超えとなり、23行では買い戻しと配当が17年から280億ドル増えた。この額は税負担の減少分を上回る。

 しかし、KBW銀行株指数は昨年20%下落している。ウェストウッド・キャピタルのダン・アルパート氏は、「長期資本を有効活用できる良好な投資をしていれば、買い戻しや配当という形で株主に現金を配る必要はない」と解説した。(ブルームバーグ Ben Foldy)