民政復帰へ三つどもえの様相か タイ下院選、立候補受け付け開始 (1/2ページ)

「現職」の立場を活用して精力的に地方巡りを続けるプラユット暫定首相=2018年5月、ブリーラム県(首相府提供)
「現職」の立場を活用して精力的に地方巡りを続けるプラユット暫定首相=2018年5月、ブリーラム県(首相府提供)【拡大】

  • タクシン派の国家維持党が一時擁立したウボンラット元王女。結婚に伴い王室を離れたことから私人としての政界入りが模索された(元王女の写真交流サイトから)

 5年近く軍政下にあるタイで、民政復帰のための下院総選挙が3月24日に実施される。定数500の小選挙区は2月上旬に立候補が行われ、投票日を経て5月にも議席が確定する。出馬する政党は10を優に超え、8年ぶりの選挙戦は多党林立となるのは確実だ。序盤にウボンラット元王女擁立による騒動があったものの、軍政の事実上の与党タイ国民国家の力党に、クーデターで政権を追われたタクシン元首相派のタイ貢献党と政権担当経験のある民主党が挑む三つどもえの様相が確実視されている。前回総選挙から有権者が800万人も増える。どんな投票行動を起こすのか。

元王女は不適切

 選挙管理委員会が日程を発表した1月下旬以降、主要各党は相次いで選挙公約を発表。本格的な選挙戦がスタートした。だが、どの党の政策も農家や地方の貧困層対策、産業の奨励など網羅的で独自性に乏しく、いささか物足りなさが残った。国際社会が最大の争点と見る軍政の事実上の継続についても野党はあえて触れず、親軍政党の国民国家の力党が「われわれは政治対立を解消するために設立された」と述べるにとどまっている。

 こうした最中、タクシン派の国家維持党が立候補期限最終日にワチラロンコン国王の実姉のウボンラット元王女を首相候補に擁立すると発表した際は、軍が抵抗するのではと一時緊張が走った。最終的に、国王が「元王女の政治関与は非常に不適切だ」とする声明文を発表したことから、その道は閉ざされたものの、クーデター後の実権を握っている国家平和秩序評議会(議長・プラユット暫定首相)の非常大権(暫定憲法第44条)がにわかにクローズアップされた瞬間ともなった。

 国家の三権を超越した同大権は新憲法下でも効力を持ったままで、反政府活動はいつ何時とも標的とされかねない。歴代タクシン派政権を「司法クーデター」で追放した憲法裁判所などの独立機関も温存されたままだ。軍政を批判しなければならない野党が、表だって軍批判をせずに選挙戦に臨むという摩訶(まか)不思議な光景が広がっている。

 伝統的に在野の色彩が強い国立タマサート大学で勉強するジュンさん(21)は、このところ毎日、総選挙についての議論を友達と重ねている。見えない力が働いて軍政が勝利する、いや、選挙に強いタクシン派が最終的には政権復帰する。はたまた、民主党が漁夫の利をさらうなど、話し合いはいつも侃々諤々(かんかんがくがく)となる。新聞やテレビなども同様の論調だ。

「反軍」で統一戦線