専欄

監視カメラに「信用スコア」… IT化に疲れ始めた北京市民

 「最近、北京市民をみていると、IT・ネットのあまりの進展ぶりに疲れ始めているのではないか、と思ってしまう」。つい先日、北京で懇談したある日本人駐在員が、中国社会の微妙な変化を口にした。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 一昨年秋に北京を訪れたとき、この同じ日本人駐在員は「北京は過去1年間で様変わりだ。シェアリング自転車があっという間に普及し、宅配サービス網も急速に進んでいる。決済もスマートフォンに一気に変わってしまった。北京市民はIT・ネットの進展の恩恵を十分に受けている」と驚いていた。それがわずか1年余りで、早くも行き詰まりをみせているというのである。

 シェア自転車は1年余り前、1時間1元(約16円)という安さと手軽さで街にあふれていたが、ピークは過ぎた印象だ。消えてなくなったわけではないのだが、よくみると壊れかけているものがあったり、放置されたままで使用不能になっているものもある。どこにでも乗り捨ててしまい、街の美観を損ねるなど、普及に伴うマイナス面を簡単には克服できていない。

 あちこちに設置されている監視カメラには、市民も息苦しさを感じているようだ。犯罪摘発には抜群の効果を発揮しているのだが、ある市民は「朝の出勤で地下鉄に乗るときから、誰かに見られている感じがする」とぼやいていた。

 スマホ決済も確かに便利になった。決済に伴うさまざまなトラブルも減ってきている。ほとんどの人がアリババなどの「信用スコア」を所有しており、一定以上のスコアであれば、安心してカネのやりとりができる。

 ところが、一定のスコアを取得できない人は、社会からつまはじきになりかねない。支払いに現金を使おうとすると、つり銭が用意されていない場合が多いし、何よりも相手から疑いの目で見られてしまう。結婚するときにも、まず相手の「信用スコア」が一定以上であるかどうかを確認するのだという。

 しかも「信用スコア」は、過去の支払い履歴だけでなく、個人の学歴や職歴、マイカーや住宅など資産の保有状況、交遊関係などまで取り込んでいるという。個人情報をがっちりと握られている。

 これでは一般大衆も疲れを感じざるを得ない。加えて政治面での締め付けはさらに厳しくなり、思ったことを軽々と口にはできない。市民の間に不満のマグマがたまり始めているようである。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus