コーヒー価格押し上げる気候変動 野生のアラビカ種に絶滅の危機 (1/2ページ)

コーヒー豆の生産、価格は気候変動で変化する可能性が指摘されている(ブルームバーグ)
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 コーヒー農家のコンドウ・マスミ氏は、ブラジル・サンパウロ州フランカ地方でコーヒー園を営み始めた1970年代、涼しい夜には毛布にくるまっていた。それが今では、持続的な気温の上昇のため冷房を必要としている。

 これは気候変動が農家の睡眠習慣に及ぼす変化の話にとどまらない。気温上昇は世界で最も身近なコーヒー豆、アラビカ種の野生種の生育地を減らしている。ブラジルからエチオピア、ケニアに至る地域の栽培者はより標高の高い場所へ移動し、農地維持のための新たな技術を導入している。

野生アラビカ種危機

 英キュー王立植物園の研究者らは報告書で、野生のアラビカ種の生育地が今後70年以内に半減する可能性が高いことを示した。今は豆の十分な備蓄があるため店で飲むコーヒーの価格は抑えられているものの、今後の気候変動の進行により生産量が減少していけば状況は一変し得る。

 「今見ているような低価格は今後3年間、気候変動よりも大きなリスクとなる」と、英サクデン・フィナンシャルの調査責任者、ジョーディー・ウィルクス氏は話す。「中米の生産者は損失を出している。今後10年の長期的な視点に立てば、コーヒー市場にとって重要性が増してくるのは気候変動だ」

 米スターバックスも使用するなど世界で最も飲まれているアラビカ種は、雨期と乾期がはっきりした冷涼な地域でよく育つ。ケニアのコーヒー研究財団によると、年間を通して15~24度の気温を必要とする。寒すぎると霜害に見舞われ、暖かすぎると品質が低下する。そして味わいを左右するのが、夜の爽やかな冷気だ。

 ところが気温上昇のため、アラビカ種の栽培に適した地域が移動しつつあるのを農家は目の当たりにしている。サンパウロ州北部に所有する120ヘクタールの農地で同品種を栽培するコンドウ氏によれば昨年、開花期の9~11月は暖かすぎて花が頻繁に落ち、豆の収穫が減った。

 「生産性は大幅に落ち込んでいる。暑さに加えて、降雨量も減少している。私たちは気候リスクの高まりを考慮して、数年前に栽培地の拡大計画を断念した」と彼は語った。

 絶滅の危機が迫っている野生のアラビカ種は、新たな風味や病気に強い品種を生み出すために必要な遺伝子資源の宝庫だ。キュー植物園の科学者によれば、気候変動と疫病、森林破壊の影響で野生アラビカ種の生息地が消失しており、その半分以上が2088年までに絶滅する恐れがある。

 農家は今後10年で、耐久性に優れたロブスタ種への切り替えを迫られるかもしれない。この品種はより暑い地域でも育つが、苦味が強い。野生種が消え行く中では、アラビカ種を別の生育環境にも適するよう品種改良することは難しくなる。

 アラビカ種は、アフリカ最大のコーヒー生産国、エチオピアにとって特に重要だ。同国のコーヒー栽培地の約80%は森林地帯にあり、面積は1万9000平方キロメートルに及ぶ。

高地栽培で対策も