【ジェーンズ・ディフェンス・ウオッチ】

車輪を装着し舗装路を高速移動できる「16式機動戦闘車」。敵の水陸両用車両が上陸する可能性のある地域に迅速に展開できる(ケルヴィン・ウォン撮影)
車輪を装着し舗装路を高速移動できる「16式機動戦闘車」。敵の水陸両用車両が上陸する可能性のある地域に迅速に展開できる(ケルヴィン・ウォン撮影)【拡大】

  • 東京・市谷の防衛省(ブルームバーグ)

 □「ライジング・サン」65年目の陸上自衛隊(1)

 ■近代化急ぐ 中核は「16式機動戦闘車」

 7月に創設65年目を迎える陸上自衛隊は本土だけでなく、島嶼(とうしょ)部の防衛など新たな課題に対処すべく部隊の包括的な 再編を加速度的に推進している。この改革は創設以来最大規模となり、作戦能力も史上最高水準に達しようとしている。国際的にも「ライジング・サン(急成長する勢力)」として注目を集める陸自の実力と将来像を、IHSマークイットの軍事アナリスト、ケルヴィン・ウォンが4回にわたりリポートする。

 陸上自衛隊には、2018年末時点で自衛官15万834人、予備自衛官8075人が所属しており、陸・海・空の自衛隊3部門の中で規模が最も大きい。

 1954年7月1日に創設された陸上自衛隊は日本の本土、すなわち北海道・本州・四国・九州の国土防衛を責務としており、北部・東北・東部・中部・西部の5つの地方部隊を有する。

 冷戦終結までは、陸上自衛隊の中核能力は、旧ソ連が、特に北海道沖の北方の島々に侵略する可能性を想定し、それに反撃するため特別に構成された大型重装甲砲撃車隊に属していた。しかし、日本の戦略的姿勢は、2004年以降の一連の防衛計画大綱に概略が説明されている通り、ソ連の脅威の消滅後に進化を見せている。

 ◆高い移動能力追究

 陸上自衛隊は現在、強引な姿勢を見せる中国や態度を二転三転させる北朝鮮、太平洋で再び存在感を高めつつあるロシアがもたらす課題や、サイバー攻撃の脅威や世界的テロリズム、大規模な自然災害など、ますます多様になる従来型とは異なる課題に対処する必要に迫られている。このことから、日本の防衛政策立案者は地上部隊全体に及ぶ包括的再編を加速度的に推進している。

 こうした中で、陸上自衛隊では主力戦車700台、榴弾砲600門から、主力戦車300台、榴弾砲300門へと大型重装甲砲撃車隊の規模を縮小する結果となった。

 新たに創設された「機動連隊」と呼ばれるユニットはそれぞれ800人規模で、連隊本部、本部支援部隊1隊、歩兵部隊3隊、演習戦闘車両部隊1隊、重迫撃砲部隊1隊、対空小隊1隊で構成されており、開発中または最近稼働開始の新車両を使用し、以前より高い移動能力を追究することも、その形成の目的となっている。

 機動連隊の中核となるのが、国産の8輪全輪駆動の「16式機動戦闘車」である。

 この機動戦闘車は研究開発を担当する防衛省技術研究本部(現在は防衛装備庁の一部門)と防衛大手、三菱重工業が08年から14年の間に179億円を投じて開発した。

 高度な移動能力と可搬性を考慮して設計されたこの機動戦闘車は、全長8.45メートル、車幅2.98メートル、車高2.87メートル、戦闘重量26トンで、重量出力比1トン当たり21.92馬力、MHI4気筒液冷ターボチャージャー付パワーパックを搭載している。

 このパワーパックにより最高時速は100キロに到達、ドライブトレインは地形に応じて8輪全輪駆動または、8輪のうち4輪駆動かのモード選択が可能である。またセントラル・タイヤインフレーション・システムも装備、ステアリング制御は前輪4輪による。

 この機動戦闘車の105ミリ52口径ライフル主砲は日本製鋼所がライセンス製造した74式主力戦車のL7砲から派生したもので、サーマルスリーブ、ペパーポット式マズルブレーキ、噴気装置を備えている。

 この主砲は93式装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)や91式多目的対戦車榴弾の弾など各種砲弾を発射できる。同軸型の住友重機械工業製74式7.62ミリ機関銃とルーフ搭載型ブローニングM2HB12.7ミリ重機関銃により近距離の防御射撃も可能だ。この機動戦闘車は移動能力と可搬性を重視しているため重装甲防護を犠牲にしており、その代わりに、発射位置や移動中の攻撃に対する進入・撤退のスピードと操縦性により、敵の攻撃にさらされにくいようになっている。

 具体的な装甲構成は機密扱いだが、この戦闘車の間隙型鋼板で覆われた外殻構造で、側面では12.7ミリ重機関銃砲撃に対する防御、前面では弧状に最高20ミリ口径の発射が可能だと考えられている。脅威レベルの高い環境で軍事行動には必要に応じて付加装甲板あるいは爆発反応装甲を設置できる。

 ◆最新発注分137億円

 防衛装備庁プロジェクト管理部(通信および電子システム、兵站、車両)のある高官はジェーンズに対し「16式機動戦闘車の設計時には、車両が幅広い種類の地形を横断できる能力を意味する通行可能性が非常に重要なポイントとして念頭に置かれていた」と語り、この戦闘車の軍事行動環境の範囲には制限された都市環境から柔らかくぬかるんだ陸地、また僻地(へきち)や山地などの狭い未舗装道のような走行が困難な地表面まで含まれると述べている。

 この高官によると、「16式機動戦闘車はそれ自体で道路やハイウエーを高速で通過し、戦車や歩兵部隊が到着するまで侵略軍を撃退あるいは拘束することができる。あるいは、空や海の輸送拠点に素早く移動し、そこから海上自衛隊の川崎重工製「C2」多目的輸送機やRoRo(ロールオン・ロールオフ)貨物船、高速フェリーなどで日本の遠隔南西諸島に移送されることもできる」という。

 ジェーンズは、防衛省が機動戦闘車99台の購入を14~18年度(14年4月~19年3月)の最新中期防衛力整備計画で承認しているとみている。防衛省によると、16年度から18年度にかけて各年度36台、33台、18台の予算が組まれており、最新発注分の費用は137億円とのことだ。

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