国内

露、経済分野でも対日批判 6月会談に向けハードル上げる思惑か

 1月にモスクワで開催され、乏しい成果に終わった日露首脳会談以降も、ロシアは執拗(しつよう)に対日牽制(けんせい)を繰り返している。ラブロフ外相は「日露が平和条約を締結できる条件は全くそろっていない」と断じ、露政府系メディアは日本がロシア産原油の輸入を減らしていると指摘し、「政治的動機がある」と主張してみせた。日本が対露交渉のてこにしようとしている経済分野でも対日批判に踏み込んでおり、6月に大阪で再び開催される首脳会談に向け、ロシア側がさらにハードルを上げている格好だ。

 2月24日に露メディアが一斉に報じたところによると、ラブロフ氏は中国、ベトナムメディアへのインタビューで、日露交渉で重点が置かれるべきは「(日本によるロシアへの)投資ではない」と述べ、経済案件を打ち出し、ロシアとの接近を図る日本側の姿勢を批判。両国間で行われている経済協力についても、「ロシアではなく、日本の経済界が関心を持っていることだ」と切り捨てた。

 その上で、6月に大阪で開催される日露首脳会談で、日本側が描く平和条約交渉での大筋合意について「どのような枠組みなのか、見たこともない」と述べ、日本側の意図には具体性が伴っていないと指摘。「安倍晋三首相は一体どこからそのような確信を得ているのか、理解もできない」と述べ、日本のペースでの交渉進展を強く牽制した。

 メディアも対日批判を展開している。露政府系テレビ局「ロシア・トゥデー(RT)」は3月2日、「政治的動機 なぜ日本はロシア産原油・液化天然ガス輸入を急減させたか」と題した電子版記事を配信。日本のロシア産原油輸入量などが1月に急減した一方、米国からの輸入は増大したと指摘し、「ロシアへの圧力をかける」狙いがあると分析してみせた。

 記事は、日本の税関統計を引用し、今年1月のロシア産原油輸入量が前年同月比で40.5%減の45万トンだった一方、米国からの輸入は3倍超の77万トンだったと指摘。

 さらに、ロシアの金融機関関係者の分析として、米国産原油の輸入増は「米国がアジア地域のエネルギー市場でプレゼンスを高めようとしている」ことを受けたものであり、ロシアからの輸入減少は「(対露)交渉で自国の立場を強めようとする試みの可能性がある」と論じてみせた。

 日本の財務省によれば、これらの数字に間違いはない。ただロシアからの原油輸入量は「月によってかなり波がある」(資源エネルギー庁)のが実情で、2017年以降を見ても、50万トンから100万トンの間でおおまかに推移しているのが実態だ。

 前回の首脳会談が実施された昨年11月には、逆にロシア産原油の輸入量は前年同月比で1.5倍に増加しており、月々の輸入量を日露交渉と結び付けるのは乱暴と言わざるを得ない。

 RTは海外向けの情報発信で知られ、米大統領選への介入疑惑を受けて17年には米ツイッターから広告配信中止の措置を受けた経緯もある。ただ、今回の記事はロシア語で書かれており、国内世論に影響を及ぼす可能性が高い。

 安倍首相は16年、プーチン大統領に「新しいアプローチ」を呼び掛け、8項目の経済協力案を提示した。以降日本は、ロシア・ボロネジや、極東ウラジオストクでの都市環境整備、医療、先端技術、中小企業支援などの分野で対露協力を進めてきた。

 ラブロフ氏も「悪くない共同経済事業もある」と認めるように、ロシア側に一定のメリットがあることは間違いない。

 ただロシア側の動きには、そのような協力を通じて平和条約、領土交渉を進展させようとする日本側の意図に対抗する狙いがうかがえる。ラブロフ氏は、一定の期限を設けて交渉を進めようとする日本側の動きを強く警戒する発言もしており、6月の首脳会談の行方は厳しいと言わざるを得ない。(産経新聞大阪経済部 黒川信雄)

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