ワシントン経済リポート

米ボーイング機墜落 「密接さ」に懸念 FAAと業界の関係にメス (1/2ページ)

 米航空機大手ボーイングの新型旅客機が半年で2機の墜落事故を起こし、「航空王国アメリカ」に対する信頼が揺らいでいる。2件の事故原因は調査中だが、新型機に導入された「MCAS」と呼ばれる失速防止装置が墜落を誘発した可能性が浮上している。ボーイングと米連邦航空局(FAA)は、機体の安全性や新型機の認可の過程に問題はないとしているが、「世界一」を自任する米航空当局と業界との緊密な関係にメスが入ろうとしている。

 3月27日、米議会上院の航空宇宙小委員会で開かれた公聴会は、航空業界を監督するFAAと、ボーイングなど大手メーカーとの「近すぎる」関係がやり玉に挙がった。

 「米国は航空安全の『黄金律』だ。FAAはそれを守る決意だ」

 FAAのエルウェル長官代行はそう証言し、航空業界で米国が「世界標準」を握っているとの自負を強調した。エルウェル氏は、墜落したボーイング737MAXの機体性能と、認可したFAAの審査過程に問題はないとの認識もにじませた。

 だが、FAAを抱える運輸省のスコベル監察官は、真っ向から対立する意見を述べた。

 「明らかにFAAが黄金律であるとの信頼は揺らいだ」

 スコベル氏はそう述べると、FAAが737MAXを認可した過程を調査することを表明。2件の墜落の要因として指摘されているMCASについて、ボーイングが導入を決めた経緯やFAAによる承認の判断についても検証する意向を示した。

安全認証 企業が代行

 公聴会で特に問題視されたのが、FAAの安全認証業務をメーカーが代行できる「ODA制度」だ。航空機材や搭載する装置に関する高度な専門知識を有するメーカーのうち、FAAが十分な安全管理体制を持つと認めた場合、メーカーの申請を受けて、FAAがODA制度の対象企業を認定する。

 新型機の認可を当局に申請するメーカー側が、当局に代わり自ら安全性を検証する仕組みといえるが、同小委員会のクルーズ議長(共和党)は「業界と当局の密接な関係が(安全管理)システムへの信頼を損なう恐れがある」と警鐘を鳴らした。

 エルウェル氏は、ODA制度が「60年以上、行われてきた」と述べ、実績に裏打ちされた仕組みだと強調。「FAAはODA制度の参加企業の全てに極めて厳格な監督を敷いている」として擁護した。

 また同氏は、ODA制度は欧州でも積極的に取り入れられており、同制度がないと仮定した場合、FAAは対応に1万人の増員と18億ドルのコスト負担を要するとの試算を明らかにした。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus