【ビジネス解読】中国が狙う「金融強国」、日本は存在感を守れるのか (2/3ページ)

香港取引所(ロイター)
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  • 今後の経営戦略を説明する香港取引所の李小加最高経営責任者=2月28日、香港(ロイター)

 ブランドファイナンスの調査は、ビットコイン先物などの金融商品開発や最新IT技術の導入などで、米国勢の資本市場への影響力が依然強いことを示す一方、18年の新規株式公開(IPO)調達額で世界首位となった香港の台頭を「米国の支配を崩す」脅威とも評価する。

 香港取引所は新経営計画に合わせて、ITと金融を融合する「フィンテック」企業の深セン市融匯通金科技の買収を決定。ビットコイン取引に使われている「ブロックチェーン」と呼ばれる先端IT技術や人工知能(AI)の活用にも布石を打っており、フィンテックへの取り組みでも米国勢を追い上げる。

 大湾区構想が後押し

 さらに、香港には中国政府の強力な後押しもある。習近平政権が推進する「ビッグベイエリア(大湾区)構想」だ。

 構想は、先端企業が集積する深セン市を含む広東省と金融都市の香港、カジノや観光で有名なマカオを一体化した経済圏を35年までに構築する長期計画。このエリアをシリコンバレーのような世界規模の技術革新拠点とし、先進的な製造業を育成する「製造強国」政策の一環だ。また、構想には、人民元の越境取引など域内の金融市場の改革開放が盛り込まれており、香港を先陣に米国に対抗する「金融強国」を目指す中国政府の狙いも透ける。

 実際、中国政府の昨年来の金融・資本市場政策には米国のドル覇権に挑もうとする動きが目につく。

 昨年3月、上海先物取引所傘下の「上海国際エネルギー取引所」で始まった人民元建て原油先物取引は、原油の国際指標であるドル建てのWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)への挑戦。続く4月の中国預託証券の発行解禁は、ニューヨーク証券取引所に上場する電子商取引大手アリババなど、中国企業の米国取引所上場で逸していた投資マネーを奪い返す仕掛けだ。

あの会社が“里帰り”上場?