ビジネスアイコラム

“リーマン”より深刻、対米摩擦で疲弊 「チャイナ・ショック」は底なし (3/3ページ)

田村秀男

 中国人民銀行は流入する外貨、すなわちドルを買い上げて資産とし、それを裏付けに人民元を発行する。外為市場は人民銀行が毎日決める基準交換レートによって管理する、事実上の「ドル本位制」である。外貨資産が減ると、通貨発行や人民元発行に支障をきたす。現に、人民銀行の資金発行と人民銀行の外貨資産はともに昨年9月以降前年比マイナスが続く。李克強首相は金融緩和を命じているが、実際には金融の量的引き締めが続いている。直接の原因は年間3000億ドルに上る資本流出だが、米国の対中制裁関税が全輸入品目に及べば国際収支赤字国に転落、その恐れだけで資本逃避が加速する。

 外貨不足を補うためには対外借り入れに頼るしかなく、既に昨年だけでも対外金融債務は2000億ドル以上増やしている。中国の信用不安は国際金融市場を揺さぶる。中国国内景気悪化と金融崩壊が同時進行し、チャイナ・ショックは世界を襲うだろう。

 米中貿易戦争の妥結めどは立たず、延々と続く。つまりチャイナ・ショックには終結の見通しはない。リーマン級にはならないと楽観して、消費税増税を強行するのは、まさに超弩級(ちょうどきゅう)の台風を前に雨戸を開けるような暴挙ではないか。

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