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都合良く日本に協議呼び掛ける文大統領…韓国企業集めるもロッテ会長らの姿なく

 【ソウル=桜井紀雄】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日、主要30企業グループのトップらを前に、日本政府の半導体材料の輸出規制強化による打撃を最小限に抑えるよう最善を尽くす姿勢を強調した。ただ、文氏が挙げた対策は時間を要するものばかりで、代替が利かない素材を狙い撃ちした措置に、打つ手がない実情をむしろ露呈させたようだ。

 会合では、半導体大手で規制強化の影響を最も受けるはずのサムスン電子の実質トップ、李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の姿はなかった。日本に出張しているためで、目前に危機が迫る中、大統領との会合よりも日本という現場での対応を優先させた形だ。

 日本の政財界に広い人脈を持つ韓国ロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン)(日本名・重光昭夫)会長も日本出張中で、別の幹部が代理出席した。

 財閥トップら30人以上を一堂に集めても本音を引き出せるわけはなく、政治的パフォーマンスにすぎないとの批判も出ている。

 文氏は「外交的な努力にもかかわらず、事態が長期化する可能性を排除できない」と吐露した。ただ、「短期的対策」に挙げたのは輸入元の多様化や国内生産の拡大など。専門家から「資金を投じて解決できたなら既に手を付けていた」と冷めた声が上がる。

 日本が対象にした素材3品目のうち、2品目は90%以上を日本からの輸入に依存。他の地域から急に代替品を求めるのも困難だ。韓国紙は「日本は100年以上も精密化学素材産業で世界最高水準にある」と基礎技術での土壌の差に焦点を当てて伝えている。

 専門家の一人は国会でこう警鐘を鳴らした。「日本は韓国に輸出しなくても代替手段があり、韓国は代替手段がないのが本質。韓国政府は子供のような自尊心に依存しようとする態度を捨てるべきだ」

 文氏は、輸出規制問題で日本に協議を呼び掛けているが、日本が貿易上の信頼を損なったとみなす日本企業に賠償を命じたいわゆる徴用工判決に対し、政府として積極的に解決に乗り出す意思は示しておらず、日本との認識の溝が一層浮き彫りになっている。

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