山本隆三の快刀乱麻

EU環境問題、足並みそろわず 安全保障、経済性 多様な事情 (1/3ページ)

 欧州連合(EU)の欧州委員会(EC)と欧州議会は気候変動問題に熱心で、温室効果ガス削減目標の強化にも取り組んでいるが、EU加盟28カ国の意思を統一することは容易ではない。

 2030年の再生可能エネルギー比率目標を27%から引き上げる試みには、再エネ比率増加によるエネルギーコスト上昇を懸念するドイツが30%以上への引き上げは無理と主張し、35%を提案した他の主要国と対立した。結局、32%で合意したが、ドイツの抵抗はこれだけではない。

 ECと欧州議会は40年の温室効果ガス削減目標(1990年比40%削減)を大きく引き上げ、55%にすることを狙ったが、最終的には45%を目標とするための協議が今年3月から、EU首脳会議で始まった。この目標引き上げにも、ドイツはポーランドなどとともに反対したと報道されている。この目標引き上げの議論は今後も首脳会議で続けられる予定だ。

 そんな中、ドイツのメルケル首相は5月、ECが昨年11月に提唱した2050年に温室効果ガスの純排出量をゼロにする目標を支持することを明らかにし、ドイツは抵抗勢力から立場を変えた。

 背景には、直後に行われたEU議会選挙で環境派とされる緑グループが躍進するなど、気候変動問題への積極姿勢が有権者に評価される流れに対応することを狙ったメルケル首相の考えがあったように思われる。

 ドイツは、ECの50年目標支持を明らかにしたものの、6月下旬に開催されたEU首脳会議で4カ国が反対したため、50年純排出量ゼロ目標を正式に決定することはできなかった。

 またECは、30年までの石炭火力廃止宣言を加盟国中8カ国しか提出しなかったことを明らかにした。

 EC、欧州議会が旗を振っても、加盟国にはエネルギーコスト、安全保障、国内炭鉱の雇用維持などの事情があり、目標設定の実現は簡単ではないようだ。

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