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富裕層子弟は“家持ち”簡単 シンガポール 不動産バブル抑止策の恩恵

 24歳の大学生が広々としたペントハウスを自分のものにして優雅に暮らしているというのは普通なら考えられない。しかもここは不動産価格が世界で最も高い都市の一つであるシンガポール。この物件の値段は120万シンガポールドル(約9200万円)だ。

 姓は明かしたくないとしてショーンと名乗ったこの大学生は、シンガポール中心部の緑豊かなブキティマ地区にあるロフトスタイルのマンションに住んでいる。実はこの物件の代金を払ったのは彼の母親だ。ショーンさんのような幸運な若者が、シンガポールで増えつつある。

 背景にあるのはシンガポール政府が不動産市場の過熱を防ぐために導入した追加的購入者印紙税(ABSD)だ。ABSDは2軒目や3軒目の住宅の購入に高い印紙税をかける制度。これを回避するために両親が子供に住宅を買い与える例が増えているとみられる。

 具体的なデータはあまりないが不動産仲介業者らによると、2018年7月に不動産市場冷却措置が施行されて以来、裕福な一族が子供たちのためにマンションを購入する件数が顕著に増えている。ABSDの税率は現在、2軒目の住宅で12%、3軒目以降は15%。

 オレンジツリー・アンド・タイの調査・コンサルティング責任者、クリスティーヌ・スン氏は「若い住宅購入者が市場で増えていることが取引例から分かる」と語る。複数の不動産を購入することを多くのシンガポール人は資産保全の方法とみているという。

 不動産仲介のサヴィルズ(シンガポール)の調査・コンサルティング担当エグゼクティブディレクター、アラン・チョン氏は子供のために住宅を買う親について、「子供が自分で家を買えないだろうと本当に心配している親もいるが、それを口実に自分たちのために家を買っている親もいる」と指摘する。

 いずれにしても、ショーンさんは感謝している。「僕の年齢でシンガポールで家を持てることはめったにない。自分の家があることはありがたい」と、ハーマンミラーのアーロンチェアやスウェーデンや日本の陶磁器に囲まれながら話してくれた。(ブルームバーグ Yongchang Chin)

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