株価・外為

「1ドル100円割れ」でも、まったく驚かない理由 「異常な円高」ごく短期 (1/4ページ)

 円はドルに対してじり高の展開となる可能性がある

 今年5月以降、外国為替市場で円高傾向が続いている。8月26日には一時、104円台半ばまで円が買われ(ドル安・円高)、1月3日の高値(104円10銭程度)に接近した。円高傾向の背景には、米国の景気後退懸念の高まりや米中貿易摩擦への警戒などから、投資家が“リスクオフ”に動いたことがある。

 この為替動向に関して、一部では「“異常”ともいえるペースで円高が進んでいる」との見方もあるようだ。確かに、8月26日朝方のような、ごく短期の動きに目を奪われてしまうと、そうした印象は拭えないだろう。

 ただ、冷静に米国の金利(国債の流通利回り)の変化などを見ると、足元の円高は必ずしも“異常”なペースで円高が進んでいるとはいえないだろう。むしろ、ドル/円の為替レートは日米の金利差や米国のファンダメンタルズ=経済の基礎的な条件の変化などに沿って推移していると考えられる。

 今後、米国経済は減速が鮮明化する懸念もある。今すぐではないにしても、いずれ米国が景気後退(GDP成長率が2四半期連続でマイナスの状況)に陥ることも考えられる。そうした状況を考えると、日米の金利差は縮小傾向に向かいやすい。やや長めに考えると、不安定な動きを伴いつつも、円はドルに対してじり高の展開となる可能性がある。たとえば「1ドル100円割れ」となっても、驚くには値しない。

 米金利の低下による円高圧力の高まり

 短期的な為替レートの変動に影響を与える要因の中で重要なのが、金利だ。投資資金は、金利の低い国(通貨)から、金利の高い国(通貨)に向かう。この基本的な理論を常に念頭に置き、ドル/円などの為替レートの動向を考えることが大切だ。

 今、米金利が上昇する一方、わが国の金利が低位に推移しているとする。為替レートが変わらないと仮定すると、円よりも、米ドルを保有した方がより高い利得を手に入れられると期待できる。

 その期待から金融市場では、円売り・ドル買いのオペレーション(取引)が増える。なお、多くの投資家は金利の低い円を借り入れて投資資金を調達し、円を売ってドルを買い、日米の金利差を獲得しようとする。これを“円キャリートレード”という。円キャリートレードはドル/円の為替レートに無視できない影響を与える。足元、米金利はわが国の金利以上に低下している。これが、円高圧力を高めている。

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