海外情勢

キルギスで続く「誘拐婚」 国連「女性の権利向上困難」と警鐘

 中央アジアのキルギスには女性を連れ去って婚姻を強要する「誘拐婚」の習慣が残る。政府は根絶の方針を打ち出しているが、「ある種の伝統」だとして許容する空気が社会にあることは否めない。国連などは「野蛮な行いが女性の権利向上を困難にしている」と警鐘を鳴らす。

 「バス停で突然3人組に囲まれ、車に押し込まれた」。首都ビシケク近郊の村に住むアセリ・キリモワさんは、17歳の時に誘拐婚を経験した。3人のうち1人は何度も交際を申し込んできた知人だった。内気な性格に好意を抱けず、断り続けていた。

 キルギスの伝統的な移動式住居に連れて行かれ、相手の親族に花嫁を象徴する白いスカーフを掛けられた。勝手に結婚式の日取りを決められ、両親に電話で助けを求めたが「受け入れなさい」と諭された。

 そのまま妻となって数年後に長女が生まれると、ようやく夫に対する愛情が芽生えた。今は夫婦と3人の子で仲良く暮らす。それでも「子供には私のような結婚はしてほしくない」と願う。

 15歳で連れ去られたミルザグリさんは数年前に離婚した。「最後まで、彼を愛することができなかった」。再婚して別の村に移ったが、前夫との離婚は近所に話せないままだ。「伝統を汚した」と非難されることを恐れているという。

 こうした乱暴な誘拐婚は違法で、申告があれば警察が事件として扱う。だが昨年5月には北部の村で不幸な事件が起きた。医学生だった女性を誘拐したとして拘束された男が、警察署内で保護されていた女性を刺殺したのだ。

 事件を受け、国連は「強制的な婚姻は伝統や文化ではなく、立場が弱い人の権利の侵害だ」との声明を発表した。国連によると、キルギスでは24歳未満の女性の13.8%が結婚を強要されたとの統計がある。都市部と比べ農村部の方が比率が高いとされ、キリモワさんは「村の若い女性の半数以上が、誘拐婚を経験している」と説明した。

 2人の娘を誘拐された別の女性は「一番嘆かわしいのは、犯罪行為という認識が薄いことだ」と断じた。

 ビシケクの運転手、マディヤス・ビリミジャンさんは2年前、母親に結婚をせかされ、誘拐婚に踏み切った。「ドレスを贈るよ」と意中の女性を公園に呼び出すと車に押し込んだ。「両親間で話はついた。彼女も理解してくれた」と話す。

 ビリミジャンさんは、妻と生まれたばかりの息子との写真を見せてくれた。3人とも幸せそうに笑っていた。「卑劣なやり方かもしれないが、社会も許容している」(ビシケク 共同)

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