山本隆三の快刀乱麻

原発が座礁資産に 欧州「勇み足」 IEA懸念「運転延長を」 (2/3ページ)

 環境投資促すEU

 ECは昨年5月に会見を行い、気候変動問題の解決に寄与する事業への投資を促すための分類基準(Taxonomy)の作成に着手すると発表した。温室効果ガスの排出を2030年に1990年比40%以上削減するというEUの目標を達成するには、欧州だけで2030年までに毎年1800億ユーロ(約22兆円)の低炭素事業への投資が必要になるとされる。公的機関だけでこれを賄うのは困難なため、民間資金を動員するための基準が必要になった。投資を促すには、各分野で温暖化対策に真に寄与する事業を示す必要があるため、各分野の専門家を集め、科学的な証拠に基づき持続可能な経済活動の基準を作成する。これにより透明性を確保し、環境案件に資金を集めることを狙う。基準は19年末を目標に策定される見通しだ。

 欧州議会は今年3月28日、この基準づくりに関し原子力発電、化石燃料、天然ガスインフラを持続可能な投資対象から除外することを決議した。この直前の3月14日には、欧州議会が30年の排出削減目標を1990年比40%削減から55%削減に引き上げるべきだと決議しており、原子力抜きで上方修正された目標の達成を求めたことになる。

 欧州議会の決議でもっとも大きな影響を受けるのは、発電電力量の約75%を原子力で賄っているフランスだろう。EDF(仏電力公社)によると、原発の運転期間延長には2025年までに550億ユーロ(6.6兆円)、30年までなら1000億ユーロ(12兆円)の資金が必要になるとみられている。原発が投資対象から外されれば、資金調達に支障を来すことになる。

 分類基準づくりの議論は続いているが、ドイツがその議論をかき回している。ドイツは基準を公表すべきでないと主張し、他の主要EU加盟国から「非公開にすれば基準をつくる意味がない。非公開はあり得ない」と反論されているとの報道がある。ドイツはEUの温室効果ガス削減目標の引き上げにも反対している。低炭素案件に投資が集中し、他の案件の資金が不足する事態を懸念しているのだろうか。

 欧州議会の原発除外の決議後、欧州原子力産業会議(FORATOM)とIEAが相次いで原子力発電の必要性を訴えるリポートを発表した。IEAのリポートは、電源の競争力、エネルギー安全保障、温暖化問題を考慮した場合、先進国では既存の原発を維持する必要があり、運転期間延長を検討すべきだとの内容だった。

 FORATOMのリポートは、デロイト・トウシュ・トーマツの分析を基に、原子力発電が欧州経済にもたらす効果は大きく、運転期間を延長し経済効果をさらに享受することが必要との内容だった。いずれも欧州議会の決議に冷や水を浴びせることになった。

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