山本隆三の快刀乱麻

原発が座礁資産に 欧州「勇み足」 IEA懸念「運転延長を」 (3/3ページ)

 FORATOMは今年4月下旬、リポート「経済的及び社会的影響(Economic and Social Impact Report)」を公表した。リポートでは、原子力発電は現状、大きな経済効果をもたらしており、2050年に向けて発電量を維持、拡大しなければいけないと強調している。

 5月下旬には、IEAがリポート「クリーン・エネルギー・システムにおける原子力発電(Nuclear Power in a Clean Energy System)」を公表した。気候変動対策上、原子力発電が必要にもかかわらず、先進国では設備の老朽化が進み、このままでは温暖化対策、エネルギー安全保障上、大きな問題が生じる可能性があると警鐘を鳴らし、既存原発の運転期間延長を先進国に促している。

 天然ガスに依存も

 原発の平均稼働年数はEUで35年、米国で39年に達しており、先進国では25年までに現在の原発の4分の1が閉鎖予定になっていると、IEAリポートは指摘している。もし既存原発の運転延長が行われないと、40年までに現行設備2億8000万キロワットの約3分の2が閉鎖され、9000万キロワットまで減少すると予測している。

 そうなった場合、天然ガスへの依存度が増し、40年までにCO2排出量が40億トン増加するという。さらに、電源と送電網などに対し40年までに1.6兆ドル(約180兆円)の追加的投資が必要になるとリポートは指摘している。そのため、経済性がある既存設備の運転期間延長と小型炉(SMR)開発の支援などを政府は検討すべきだとしている。

 気候変動対策に加えてエネルギー安全保障面でも既存原発の運転延長が大きな課題として注目され始めている。日本もこうした課題を改めて認識する時期にきたようだ。

【プロフィル】山本隆三

 やまもと・りゅうぞう 常葉大学経営学部教授。京大卒業後、住友商事に入社。地球環境部長などを経て、2008年プール学院大学国際文化学部教授、10年から現職。財務省財務総合政策研究所「環境問題と経済・財政の対応に関する研究会」、経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。現在、国際環境経済研究所所長、NEDO技術委員などを務める。著書に『経済学は温暖化を解決できるか』(平凡社)、『夢で語るな日本のエネルギー』(マネジメント社)など。

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