専欄

中国、米中経済戦争で遠のく資本自由化

 中国はできるだけ早期に資本自由化をしようと望んでいる。中国が今後、さらなる発展を遂げていくためには、資本自由化によって海外から多くの資金を集めることが不可欠だからだ。ところが、少しでも窓を開けようとすると、海外の投機資金が入り込んできて経済を不安定にさせてしまう。これまでは貿易収支の大幅黒字が続いたのでなんとか持ちこたえてきたが、米中経済戦争の激化によってそれも難しくなってきた。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 李克強首相は2013年に、主宰する国務院(内閣)常務会議で、各分野の改革を積極的に進めていくようにとの指示を出している。中でも注目されたのは、かねて懸案となっていた資本自由化について具体的な実施案の検討を指示したことだった。これを受けて、資本自由化に向けての準備的な措置がいくつか打ち出されたりした。

 ところが、15年の人民元切り下げをきっかけに、海外への資金流出が激化した。外貨準備はその後の2年間で2割以上も減ってしまった。資金流出を防ぐために、外貨リスク準備金の導入、一方向の為替変動を抑制するシステムの導入、資金流出規制の強化など、資本自由化に逆行する規制策を導入せざるを得なかった。

 その後、資金流出が和らいできたことで、これらの措置は段階的に停止または緩和されるに至った。中国人民銀行(中央銀行)は今年7月には、金融市場の新たな開放策を発表している。その柱となっているのは、外資格付け会社の業務拡大である。このほか、外資が債券の引受主幹事を務めるのを認めた。保険分野では、外資が中国市場に参入する場合に課していた「業歴30年以上」の制限をなくした。

 だがそれもつかの間、8月に入ると、人民元の対ドル相場が1ドル=7元台に下落した。米中経済戦争が激化する中で、中国としては人民元安を容認し、低調な輸出を下支えする必要がある。しかし、人民元安の進行は再び海外への資金流出を加速させ、中国の金融市場を不安定化する恐れがある。これを防ぐために、資金流出を抑制する規制策を再び、導入せざるを得なくなっている。

 しかも米中経済戦争の激化で、これまで大幅な黒字を続けてきた貿易収支にも異変が生じている。こうした状況が続く限り、とても資本自由化には踏み切れそうにない。それに耐えられるだけの金融市場や国内企業の早急な体質改善が求められる。

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