海外情勢

インドネシア地震1年 スラウェシ島の漁師ら苦悩 移住要求に「職失う」

 4800人以上が死亡・行方不明となったインドネシア・スラウェシ島中部地震から、9月28日で1年がたった。最大被災地、中スラウェシ州の州都パルでは日本の支援を受けながら復興に向けた取り組みが進むが、大規模な液状化などにより住民の生活再建は難しい状況だ。海沿いから移転を求められた漁師らは、職を失うことになると反発している。

 昨年9月の地震は、津波に加えて大規模に発生した液状化で被害が拡大した。インドネシア政府は沿岸部や内陸部の液状化被害地域を暫定的に居住禁止とし、地元当局が住民に移転を促している。

 パル北部の海沿いの村マンボロ・バラット。漁師、サムスディンさんは住宅を再建し、パル市当局から山の方へ移転を求められても拒否している。別の職業に就くための訓練も提案されているが「無理だ。先祖代々漁師なんだ」と語った。

 別の漁師、シャムスさんは、仮設住宅とマンボロ・バラットを行き来している。2004年のスマトラ沖地震を例に挙げ、「(被災地の)アチェ州で移転させられた住民も戻ってきた。自分もそうするだろう」と、以前と同じように暮らすことを望んでいた。

 パル西部のバラロア地区などでは、コンクリートの道路が液状化で盛り上がり、家屋の残骸が一面に広がったまま。パル中心部のモスク(イスラム教礼拝所)敷地内では125の避難テントで被災者が暮らす。その一人のエンダさんは地震前に夫を病気で亡くし、身寄りがないという。「お金がないときは2000ルピア(約15円)の即席麺代すら払えない」と、将来への不安を訴えた。

 日本はインドネシア政府の要請を受け、復興に協力。パルのシンボルだった橋の再建に25億円分の無償資金協力をするほか、インフラ改修や液状化対策などで円借款計約280億円分を供与する予定だ。国際協力機構(JICA)の日本人専門家も、生活支援を行っている。(パル 共同)

【用語解説】スラウェシ島中部地震

 2018年9月28日、インドネシア・中スラウェシ州の州都パルの北約80キロを震源とするマグニチュード(M)7.5の地震が発生。州政府によると、パルとその周辺地域での死者は集団埋葬された身元不明者を含め4140人、行方不明者は705人、被害家屋は約11万戸に上った。復興に必要な予算は約36兆4000億ルピア(約2750億7000万円)と試算されている。(パル 共同)

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