海外情勢

ラオス住民、中国一色に不満 高速鉄道建設、雇用・投資なく地元不在 (1/2ページ)

 中国雲南省とラオスの首都ビエンチャンを結ぶ高速鉄道「中老鉄路」の建設工事がピークを迎えている。ラオス公共事業省によると、足元の建設進捗(しんちょく)率は約75%。「橋脚とトンネルの工事はほぼ終わった」(同省)といい、列車が走行するための主桁や床版の設置を中心に工事は進められている。ラオスの46回目の建国記念日である2021年12月2日の開業に向け、順調に進んでいるかのようだ。だが、現場は「香港問題」の緊張感からかピリピリとしたムードに包まれており、周囲への警戒心も強い。現地での雇用や投資もないことから、地域の人々はすっかりあきらめ顔だ。

 取材写真に過剰反応

 「ノー・フォト!ノー・フォト!」。ビエンチャンから北に約150キロ。国内有数の観光地バンビエンの建設現場を訪ねた9月末のことだ。工事の進む中老鉄路の様子を道路脇から写真撮影していると、いきなり3人組の男たちに囲まれた。ラオス人かと思い、互いに理解できるはずのタイ語で「どうしてだ。私は一般道路から取材しているだけだ」とただしたが、相手は大声を挙げて威圧するだけ。近くの雑貨店の店主に尋ねると、男たちは中国人で、鉄道建設のために本国から派遣された人たちだった。

 今年前半にもビエンチャンや中国・ラオス国境付近の工事現場を取材した。だが、こうした反発や警戒は一切なかった。中国資本による建設工事でもここはラオスで、ある種の抑制もあったはずだ。ところが今回は、「撮影した写真を見せろ」と手を伸ばして露骨に迫ってくる。明らかに何かを恐れていることが分かった。

 このまま撮影した写真を見せないと、身柄を拘束しかねないほどのすごみを効かせてくる。だが、そんなことに応じるわけにはいかない。私は男たちを振り切ると、止めてあったオートバイに小走りに駆け寄ってエンジンをかけ、直ちにその場を立ち去った。情けないが逃げるしかない。幸い、それ以上の追っ手はなかった。

 総工費約60億ドル(約6500億円)。そのうち7割を中国が拠出し、ラオス負担分も借款供与して建設される中老鉄路。ビエンチャンからはメコン川を渡り、タイの首都バンコクに向けて建設が進む「タイ・中国高速鉄道」と接続されることが、4月下旬に北京で開催された「『一帯一路』国際会議」の首脳会談で決まっている。

 これにより、早ければ23年中にも陸路による北京-バンコク間の直通列車が運行される可能性が高まった。そのまま南に進めばマレーシア、そしてシンガポール。西に行けばミャンマー、東に行けばカンボジア。インド洋への直接のアクセスを可能とさせる、中国によるインドシナ半島への支配力が強まったことを意味する。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus