海外情勢

トランプ米政権、対トルコ制裁で失態挽回を図る

 トランプ米政権が14日、シリア北部でクルド人勢力に対する軍事作戦を展開するトルコのエルドアン政権に制裁を科したのは、シリア北部からの米軍撤収表明でトルコの軍事作戦に道を開くことになった失態を挽回する狙いからだ。しかし、与野党の有力議員からは、米政権の対応でトルコの迫害行為を阻止できる見込みは薄いとして、懸念の声が広がっている。

 トランプ政権が発表した制裁について、下院外交委員会のマッコール筆頭理事(共和党)は「シリアで言語道断の犯罪行為を行っているトルコを処罰するには不十分だ」と指摘。民主党のペロシ下院議長も「一連の制裁は、人道上の惨劇を食い止めるには足りない」と批判した。

 同時に、トランプ大統領によるシリア北部からの米軍撤収決定に対する疑問の声も強まる一方だ。

 シリア北部の米軍部隊は、イスラム国(IS)の再台頭を抑え、情勢を不安定化させかねないトルコやシリアのアサド政権軍、イランやロシアの動きを牽(けん)制(せい)してきた。昨年まで対IS有志連合の調整役を務めたマクガーク前大統領特使は、米軍撤収は「思慮やプロセス、計画性を欠く」と指摘。IS再興の恐れが高いことを念頭に「米国の安全保障に重大な影響を及ぼす」と警告する。

 しかし、トランプ氏は14日の声明で、「トルコは人道危機を引き起こしており、戦争犯罪に問われ得る条件がそろいつつある」と批判しつつも、撤収方針は変らないと言明した。

 同氏はツイッターで「アサド政権にクルド人を保護させ、トルコと戦えばいい。ロシアや中国がシリアを支援したいならお好きにどうぞ」とも表明。IS掃討で米軍と共闘してきたクルド勢力を突き放す発言に批判が強まるのは確実だ。(ワシントン 黒瀬悦成)

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