海外情勢

中国経済は“成長の限界” 「想定外の過去最低」が示す本当の意味 (2/3ページ)

 深刻化する“灰色のサイ”=債務問題

 経済活動の効率低下に伴い、中国では債務問題も深刻化している。債務問題は“灰色のサイ”として論じられることが多い。灰色のサイとは、深刻な問題が発生する確率が高いと考えられるにもかかわらず、その問題の影響度合いがあまりに大きいため対策が難しい状況を指す。

 中国における灰色のサイ問題を考えるには、鉄道セクターの現状を確認するとわかりやすいだろう。中国の国有企業である“中国国家鉄路集団”は、政府の景気刺激策の一環として内陸部に高速鉄道網を建設してきた。資金は借入などによって調達され、同社の負債総額は86兆円程度に膨れ上がっている。

 一方、都市部に比べて内陸部では鉄道の利用者数が相対的に少ない。高速鉄道網を整備しても採算の取れない路線が増えている。それは、債務の元利金を支払うことすら難しい案件の増加にほかならない。

 にもかかわらず、政府は補助金を支給して国有企業の経営を支え、さらなる投資を目指してきた。不採算案件が増える中で投資が積み増しされれば、不良債権は増えるだろう。

 共産党政権は求心力の低下を避けられるのか

 中国政府の本心としては、不良債権処理を行いつつ構造改革を進め、成長期待の高い先端分野にヒト・モノ・カネが再配分されやすい経済環境を整えたい。ただ、改革には一時的な痛みが伴う。香港や新疆(しんきょう)ウイグル自治区などでは人々の不満が増大している。共産党政権は求心力のさらなる低下を避けるべく、債務に依存した経済運営を優先せざるを得ない。

 また、地方政府の幹部の評価・昇進は、共産党指導部の目標に沿った経済成長を実現できたか否かにも影響される。地方政府は補助金政策を手放せないだろう。結果的に、中国は債務リスクの高まりやバブル崩壊後のわが国の教訓をもとにした構造改革の重要性を認識しつつも、投資への依存を続けてしまっている。

 さらに、中国政府は不動産のバブルにも対応しなければならない。未来永劫、資産価格が上昇を続けることはありえない。どこかのタイミングで、中国の不動産バブルははじけ、その後は経済全体でバランスシート調整と不良債権処理が不可避となる。

 GDP成長率6%維持は難しい

 当面、中国経済がさらに減速する可能性は軽視できない。米中の通商交渉などの展開によって一時的に景気が上向く可能性はあるが、それがどの程度続くかは不透明だ。すでに李克強首相はGDP成長率が6%を維持するのは難しいとの認識を示している。

 中国では景気刺激策の効果が表れづらくなっている。昨年来、中国政府は景気減速を食い止めるためにインフラ投資、減税、補助金、融資拡大、地方債発行の前倒しなど政策を総動員してきた。

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