海外情勢

中国経済は“成長の限界” 「想定外の過去最低」が示す本当の意味 (3/3ページ)

 しかし、GDP成長率をはじめ、小売り(個人消費)、固定資産投資などの主要経済指標は自律的な回復を示すには至っていない。中国政府は景気対策をさらに強化するだろうが、それがどの程度の景気浮揚効果をもたらすかは不透明だ。

 そう考える背景には複数の要因がある。債務の持続性への懸念が高まる中、投資依存型の経済を維持することは難しい。また、米中貿易摩擦の影響も軽視できない。

 10月の米中閣僚級協議を受けて両国が部分合意に至り、共同文書の作成、両国トップの署名を経て“休戦協定”が締結される可能性は高まった。ただ、本当に米中の首脳が文書に署名できるか否かは不確実だ。

 先行きは楽観できない

 署名の実現が困難となれば、米国は第4弾対中制裁関税の残りの部分を発動するかもしれない。それには、スマートフォンなど米中経済に無視できない影響を与える品目が含まれる。産業補助金など、米中の溝が埋められていない分野も残っている。米中貿易摩擦の先行きには不透明な部分があり、先行き警戒感は残るだろう。

 加えて、中国では雇用・賃金環境が悪化し、消費マインドが冷え込んでしまっている。それは、9月まで中国の新車販売台数が15カ月連続でマイナスとなったことから確認できる。中国の需要はかなり鈍化してしまっており、短期間で回復する展開は見込みづらい。

 米中の通商協議などの動向によって一時的に景気浮揚期待が高まる可能性はある。ただ、それが中国経済の自律的な回復につながるとは言いづらい部分がある。債務問題解消のめどが立っていない中、中国経済の先行きは楽観できないだろう。

真壁 昭夫(まかべ・あきお) 法政大学大学院 教授
 1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。

 (法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)(PRESIDENT Online)

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