海外情勢

フィリピン・ミンダナオ島、IS志願者なお多数 イスラム少数派に憧れと出世欲

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)は支配地域と指導者のバグダディ容疑者を失い、国際的な影響力も衰えた。だがイスラム世界の中心から遠い東南アジアには今も、ISへの合流を望む多数の志願者がいる。「真の聖戦」への憧れや、“本場”で活躍して組織内で出世したいとの欲求。過激派が政府軍と戦闘を続けたフィリピン南部ミンダナオ島で、彼らの思いを探った。

 「就職や昇進で差別」

 湖に面した市街地は廃虚となり、モスク(イスラム教礼拝所)も教会も住宅も全壊していた。同島西部マラウイ。ISと接点を持つ過激派「マウテ」が2017年5~10月、ここで政府軍と戦闘を展開し、1300人超が死亡した。

 ミンダナオ島は長くイスラム反政府勢力の拠点だった。人口の9割をキリスト教徒が占めるフィリピンで、マラウイなど同島西部の住民は大半がイスラム教徒だ。

 地元の60代の弁護士、パドゥマン・パプロは「私たちは就職や昇進で宗教的差別に苦しんでいる。若者らがISに流れるのは、そのためだ」と説明した。

 軍高官によると、8000キロ以上離れたイラクやシリアに渡りISに合流したフィリピン人は数百人。一部は既に帰国しマラウイでの戦闘に加わった。「ISのアジア拡散」と警戒される動きだ。

 今年6月、マウテの元戦闘員でともに20代のアジズとアンコに話を聞いた。2人とも農民で反政府勢力「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」のメンバーだった。「政府と妥協せず真の聖戦を貫くのは自分たちだけ」と訴えるマウテに勧誘され、15年に加入。マラウイの戦闘で「敵を何人も殺した」。

 アンコは、政府との和平を受け入れたMILFより「死ぬために戦う」マウテやISの方が「格好良く思えた」と振り返る。アジズは「『戦って死ねば天国直行だ』と言われ信じた」と話した。

 生還すれば箔が付く

 2人とも聖典コーランの知識はほとんどない。現実の戦闘で多数の市民が犠牲になるのを目撃し、戦いの正当性に疑念を抱いて脱走した。

 だがアンコは「今でも機会があれば中東でISに加わりたい。ISの思想はよく分からないが、正しい聖戦のはずだ」と話す。イスラムの中心地・中東に渡れば、思想的理解が深まるという願いもあるという。

 アジズは同意せず「外国でISに加わりたがるのは、生きて帰れれば箔(はく)が付き、組織内で指導者になれるからだ」と指摘した。アンコは肯定も否定もしなかった。

 記者は17年7月、イラク北部モスルでのIS掃討作戦を取材中に、アジア人戦闘員の遺体を目撃した。その写真を2人に見せると「(ミンダナオ島西方)スルー諸島の人間だ。マラウイの戦闘でもよく似た顔の男がいた」と断じた。

 今ISに合流すれば、同じように殺される可能性が高い。アンコは「どうせいつか死ぬ。正しい大義のために死にたい」と話した。(敬称略、マラウイ 共同)

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