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若者と中高年がいがみ合う“世代間戦争” 大流行した「OK BOOMER」 (1/2ページ)

 社会や政治の分断が進んでいるといわれる米国で最近、よく耳にするのは世代間で広がるギャップだ。銃規制や気候変動問題をめぐり、若者が中心となって抗議活動を展開し、積極的に行動を起こさない大人たちを批判。インターネット上では高齢者と若者が互いを揶揄し、中傷する動画や写真も多く出回っている。高齢者と若者が反目する「世代間戦争」(米紙ニューヨーク・タイムズ)はなぜ起きているのか。(ニューヨーク 上塚真由)

 スラングが大流行

 7月半ば。動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」に投稿されたある動画が、瞬く間に拡散された。動画に写るのは白人の中年男性と、白人の若い女性。2人が登場する別々の動画が編集され、1つの画面に収まっている。

 中年男性がこうまくしたてる。「ミレニアル(1981年~1996年生まれ)やジェネレーションZ(1997年以降生まれ)は『ピーターパン症候群』だ。彼らは決して大人になろうとしない。彼らは世の中が平等で、政府がすべてを面倒をみてくれるという理想郷を思い描いているが、成長すると、そんな理想郷は存在しないと気付くだろう」

 男性が早口で語る中、隣の若い女性は一言も反論せず、笑みを浮かべながら手元の紙に文字を走らせる。最後に女性が「OK BOOMER(オーケー ブーマー)」という文字を見せて、短い動画が終わるのだ。

 中年男性が先にネット上に出した動画を女性が加工したとみられるが、この動画をきっかけに「OK BOOMER」というスラング(俗語)が、10代後半から20代の若者の間で大流行した。第二次大戦後の出生率が上昇した時期に生まれたベビーブーマー(1946~1964年生まれ)による若者批判に「もういいよ。議論は十分」と諭し、年配者の「上から目線」をからかう意味合いもある。

 説教にうんざり

 ネットでは、「OK BOOMER」を題材にした楽曲を発表したり、Tシャツやコップなどのグッズを制作したりする若者が続出した。

 米中西部イリノイ州の大学1年生、ニナ・カスマンさん(18)も、その一人。「OK BOOMER」に共感し、ステッカーや靴下、水筒、ノートブックなどを制作している。「売り上げはまだ100ドル程度」と話すが、グッズの売り上げを大学の学費に充てたいという。

 カスマンさんの両親はジェネレーションX(1965~1980年生まれ)と呼ばれる世代で、祖父母がベビーブーマー世代だ。「私たちの世代は学生ローンを抱え、最低賃金は上がらず生活の余裕がない。上の世代よりも厳しい環境にあるのに『若者は傷つきやすい』と文句を言われてうんざりしている」と語る。

 カスマンさんが抱えるのは、「ベビーブーマー世代の失敗のツケを払わされている」という意識だ。「地球温暖化は、ベビーブーマー世代の無責任さで悪化したもの。にもかかわらず、証拠が不十分だといって温暖化の事実を信じない人も多い。前進や変化を嫌う古い考え方の人たちとは、これ以上、話をしても時間が無駄なだけ。だから何を言われても『OK』と言って議論を遮るのがいい」と語る。

 ブームは米国以外にも波及。ニュージーランドの議会では11月5日、25歳の女性議員が地球温暖化対策について演説中に年配の議員からやじを受けて「OK BOOMER」と受け流し、話題となった。

 「これは戦争だ」

 こうした若者の間で起きている現象に、年配者の側も黙ってはいない。

 米国の保守系のテレビコメンテーターなどは「年齢差別だ」と強く反発。年配者が投稿したとみられるネット上の動画や写真には、地球温暖化問題への取り組みが不十分だと大人たちにかみつくスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさん(16)や、急進左派系の民主党下院議員、アレクサンドリア・オカシオコルテス氏(30)を揶揄するものが多く見受けられる。

 上の世代が若い世代に「最近の若者はダメだ」と批判することは珍しくないが、米国で起きている世代間対立はやや深刻だ。ニューヨーク・タイムズは「OK BOOMER」現象を「業を煮やした何百万人もの子供たちのスローガン」だと紹介し、記事に「友好的な世代間関係は終わりを告げる。これは戦争だ」との見出しを付けた。

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