海外情勢

トランプ大統領の誕生は「分断の原因」ではなく結果 見えない戦争、既に突入 (3/3ページ)

 移民を排除すれば、アメリカ国民は競争を経ることなく職や収入を得られるようになるだろう。だが、同時にアメリカのアイデンティティー、力の根源を失うことになりかねない。そうなると本当に「アメリカは終わった」という時代が訪れるようになるのかもしれない。

 私は、トランプのような政権が長続きするとはとても思えない。いずれ揺り戻しはくるだろう。今後、トランプが弾劾されたり、再選ができなかったりという可能性は大いにある。だが注意しなければならないのは、トランプに代わって出てくる新しい大統領が、いまの大きな流れを引き戻せるか、再びアメリカが“持ち出し”をしてでも世界の統治にあたるような世界に戻そうとするかどうか、という点である。

 「見えない戦争」はもう発生している

 答えはノーだ。トランプは「原因」ではなく、アメリカの分断の「結果」に過ぎない。多少の揺り戻しはあるかもしれないが、おそらく次の大統領もトランプほど極端ではないにせよ、アメリカ・ファースト的な政策をおこなうことになるだろう。

 このままアメリカがリーダーシップを失う状況が続けば、それぞれの国が自国の事情で動く、そんな世界がやってくるだろう。国際社会において協調して、人の移動を受け入れ、より平和な世界をつくっていこうというリベラルの理念は、崩壊していくことになるだろう。

 歴史を見れば、国家間の根強い対立や社会・政情不安を背景に、各国が交渉や話し合いではなく、武力で主張を通してきたのがかつての大戦だった。今現在そういった危険性がすぐそこにあるとは言えないが、すでに“見えない戦争(インビジブルウォー)”はさまざまな場所で発生している。これがいつか目に見える戦争にならないことを願うばかりだ。

田中 均(たなか・ひとし) 日本総研国際戦略研究所理事長
 京都市生まれ。日本国際交流センターシニア・フェロー。1969年京都大学法学部卒業。外務省に入省後、72年にオックスフォード大学修士課程(哲学・政治・経済)修了。北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、在英大使館公使、総合外交政策局総務課長、北米局審議官、在サンフランシスコ総領事、経済局長、アジア大洋州局長を経て、2002年より外務審議官(政務担当)を務め、05年退官。東京大学公共政策大学院客員教授(2006-18年)。著書に『外交の力』(日本経済新聞出版社)、『プロフェッショナルの交渉力』(講談社)、『日本外交の挑戦』(角川新書)などがある。

 (日本総研国際戦略研究所理事長 田中 均)(PRESIDENT Online)

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