暴れる地球

(中)チリ、大干魃で水不足深刻 家畜被害1万頭以上 森林火災多発

 南米チリの北中部では2010年から「大干魃(かんばつ)」と呼ばれる深刻な日照りが続き、今年は1968年に次ぐ最低降水量を記録する見通しだ。水不足で家畜が死に続け、農牧畜業は大打撃。水の争奪戦や森林火災も相次いで起きている。

 「家畜はみな栄養失調だ。これまでは何とかしのいできたが、いつまで続けられるか」。中部バルパライソ州チンコルコの牧場で、あばら骨が浮き出るほど痩せた馬や牛を横目に、牧畜業のガブリエル・プラドさんがつぶやいた。水不足で家畜の飼料となる草が育たず、牛約50頭のうち32頭が死んだ。

 チリ農業省によると、今年の干魃地域での家畜被害は1万頭以上で、特に同州が深刻だという。プラドさんは「気候変動が原因だ。自分が子供の頃は北から南に砂漠がどんどん広がっていると言われたが、この地域は既に砂漠のようになった」と話す。

 干魃地域の一つ、首都サンティアゴの今年11月上旬までの降水量は約82ミリで、1981~2010年の平均降水量の約336ミリを大きく下回っている。1968年の年間降水量はこれより少ない69.2ミリだったが、気象庁気候変動課のマリア・アレハンドラ・ブストス予報士は「干魃が10年間続いているという点で、68年よりも状況が悪い」と指摘する。

 干魃により、水の奪い合いという別の問題も発生。中部イエロビエホの上下水道協同組合によると、大規模農家が作物用の水を確保するために貯水池を造ったり、大型の井戸を掘ったりするため、周辺の一般家庭の飲用水が不足する事態が起きている。組合のアルバロ・エスコバル事務局長は「セキア(スペイン語で干魃の意)というよりサケオ(略奪)だ」と訴える。

 森林火災も多発している。世界遺産登録されている港湾都市バルパライソでは2014年4月、大規模な山火事があり、15人が死亡。約2900棟の建物が焼け、約1万2000人が被災した。その後も火災が相次ぎ、死傷者が止まらない。

 ピニェラ大統領は今年9月の記者会見で「チリはかつて水が豊富にあるかに思えたが、気候変動により状況は変わったようだ。恐らく永遠に」と述べた。

 飼っていたヤギ約50頭が死んだというチンコルコの牧畜業、イグナシオ・ロボさんは「われわれも自然を大切にしてこなかった。しかし地球温暖化を止めるために大国は何もしていないし、トランプ米大統領はその存在すら否定している」と憤った。(チンコルコ 共同)

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