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内部留保を投資へ 与党税制改正大綱、ベンチャー投資に税優遇

 与党税制改正大綱では、企業の内部留保をM&A(企業の合併・買収)などの投資につなげるための制度が新設された。企業がベンチャー企業に一定以上の金額を出資した際、出資額の25%を課税所得から控除し法人税を軽減する。大企業がベンチャーに出資しやすい環境を整備し、ビジネスモデルの変革を促す。

 ベンチャーに資金を供給すると同時に、大企業にも新たな技術や発想を吸収させる、双方にメリットのある税制を目指す。経済を活性化させるほか、企業の国際競争力の底上げも狙う。

 具体的には大企業が設立10年未満で非上場のベンチャー企業に1億円以上を出資した際、出資額の25%を控除。中小企業は投資額の水準を1000万円以上にまで引き下げる。適用は2年間となる。

 取得した株式を5年以内に譲渡した場合は優遇措置が受けられない。この期間を1年とする案もあったが「投機目的の出資での税優遇が懸念される」との声もあり修正。控除を受ける際に、出資目的などの説明を求め事業革新につながるような投資だったかを確認できる仕組みも盛り込んだ。

 財源には研究開発や設備投資に応じた税優遇措置の適用を厳格化し、さらに交際費の50%を経費(損金)として税負担を減らす特例措置を縮小して充てる。

 税制措置の新設にあたり念頭にあるのは、企業が蓄えた莫大(ばくだい)な内部留保だ。企業の利益剰余金は30年度で463兆1308億円にも及ぶ。こうしたお金が眠ったままでいることで日本経済が停滞することへの危機感は強く、成長投資に振り向かせることで企業の国際競争力や生産性を高めたい考えだ。

 ただ、優遇の条件である事業革新に資する投資かどうかを判定する基準には曖昧さが残り、制度の実効性には不透明な部分もある。

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