専欄

アメリカと香港で揺れた中国の1年 「新冷戦」は貿易問題を超えて

 中国にとって2019年は、米国と香港への対応に頭を痛めた1年といえよう。

 その米国と香港を結び付けたのが、先月下旬の米国における「香港人権法」の成立である。中国は、同法の成立前からも香港の事態への米国の関与を批判してきたが、成立後はメディアを総動員して、「人権と自由を口実に、内政に干渉する覇権的行為だ」と米国を厳しく非難し、一定の報復措置も取っている。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 香港で当局への抗議行動が始まったのは今年6月だが、貿易摩擦を発端とする米中の対立が激しくなったのはその約1年前である。この対立を「新冷戦」とする見方もあるが、対立が貿易問題にとどまらず、グローバルな覇権争い的性格を帯びていることは否定できないだろう。

 中国のメディアは建国70年を記念する社説などで、「中国の特色ある社会主義」によって奇跡的な経済成長と政治的安定が実現したことを自賛し、一党支配下における市場経済という「中国モデル」が他の発展途上国の参考になるだろうと主張した。

 10月末の共産党の重要会議はまた、今世紀半ばの建国100年に向けて、米国に代表される西側モデルとは全く異なる中国モデルを堅持、整備することを決定した。

 米中の抗争は両者の妥協によって、一時的な合意に達したが、根底には政治体制や価値観などの違いがあり、両国の対立要因となっている。

 周恩来とともに1972年の米中和解を演出したキッシンジャーは先月中旬、ニューヨークで開かれた米中関係全国委員会のイベントで、米中の抗争に勝者はなく、「どちらかが他方を支配することはもはや不可能」と語っている。米国が自己の意思を押し付けることができないほどに、中国は大きくなってしまったということだろう。

 例えば、18年、中国の国内総生産(GDP)は米国のGDPの65%だが、24年にはそれが80%以上になると国際通貨基金(IMF)は予測しており、30年前後には中国のGDPが世界最大になるとみられている。

 香港問題や新疆問題などで、米国は人権や自由を掲げて、中国を非難し牽制(けんせい)している。だが、強国化を目指す中国を止めることは米国でさえできないと、キッシンジャーは主張しているのである。インドが米中に対抗できる大国に成長するであろう今世紀半ばまで、米中2強時代が続くのだろうか。(敬称略)

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