国内

不透明な実態に乏しい加盟メリット AIIB設立4年、静観を続ける日米

 世界に向けて影響力を示しているアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対し、日本政府は米国とともに加盟せず、距離を置いたままだ。国際開発金融機関として、公平性の観点などで懸念が拭えていないことが主な理由だが、加盟するメリットが乏しいことも背景にはある。「日本も加盟すべきだ」との声も最近は影をひそめており、日本政府としても当面は様子見が続きそうだ。(蕎麦谷里志)

 融資承認120億ドルも、実際は…

 「とてもじゃないが、まだ判断できる段階ではない」。財務省の担当者はAIIBへの加盟について、そう語る。発足当初から日本政府がAIIBに対して持っている疑念はまだ晴れていないからだ。

 AIIBは、アジアの途上国を中心にインフラ整備の資金を投融資する組織として設立された。もし、環境破壊や地元住民の意向を無視した開発への融資が実行されるなら、日本政府としても資金を拠出するわけにはいかない。

 現段階では、大きな問題は表面化していないが、理事会で承認された累計融資額120億ドルのうち、実際に融資されたのは2割にも満たない。その多くは世界銀行やアジア開発銀行(ADB)のプロジェクトに相乗りする協調融資で、AIIBの実態を見極めるには材料が不足している。今後、AIIBによる単独融資が増えていく中で、適切な開発が行われるかを注視していく必要がある。

 「まだデメリットの方が大きい」

 現状では、日本が加盟する利点は乏しい。当初は、日本企業がアジアのインフラ開発から取り残されるとの懸念もあったが、AIIBの入札は加盟国以外の企業にも開放されており、今も日本企業による入札は可能だ。むしろ、途上国のインフラ整備では「日本企業が得意とするような高い技術を必要とする案件が少ない」(関係者)という実態もあり、AIIBへの加盟を求める声は少ないのだという。

 大和総研の神尾篤史主任研究員は「中国のための金融機関というイメージは根強く、それを払拭していくことが重要だ」と指摘。その上で、日本が加盟することについては「まだデメリットの方が大きく、いま入る必要性は低い」と指摘している。

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